国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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解説「ICCの機構─①a予審裁判部」(2011.04.09更新)

ICCの機構─予審裁判部門(The Pre-Trial Division)

www.icc-cpi.int

以下は、旧ICC公式サイトでの「予審裁判部門(Pre-Trial Division)」の説明をJNICC勝見が独自に翻訳したものを、外務省の正訳公開に伴い新たに再編成したものです。この部門に関する厳密な規定については、ローマ規程の第39条を参照してください。

 

予審裁判部門(Pre-Trial Division)の構成
予審裁判部門には、主に刑事裁判実績のある判事が配属されます。任期は3年で、任期途中に審問が開始され規定の任期中に完了しない場合は、審問が完了するまでが任期となります。(現在の人員: ウィキペディア

 

予審裁判部(The Pre-Trial Chamber)
予審裁判部は、1名又は3名の判事から構成されます(ローマ規程第39条2項b

 

予審裁判部の権限
予審裁判部には主に次の4つの権限があります。
1. 捜査開始の可否の決定
2. 検察官の任意による捜査中止の決定に対する判断
3. 逮捕状および召還状の発行 
4. 公開審問の運営管理

 

1. 捜査開始の可否の決定
捜査を行うに十分に合理的な根拠があると判断した場合、検察官は、訴追の根拠となる証拠を予審裁判部に提示しなければなりません。予審裁判部は、①検察官が提示した案件がICCの管轄にある犯罪要素に抵触するかどうかを審議し、②捜査開始の可否を判断します。このとき適用される管轄権および許容性に関する判断は、その後同要素に関して行う判断に影響を及ぼしてはならないことが規定により定められています。
予審裁判部が検察官の提示した根拠に対し「十分に合理的な根拠」とはなりえないと判断した場合、検察官は①捜査開始を中止するか、又は②同案件に関する更なる根拠を提示して再度捜査開始の許可を要請することができます。
2. 検察官の任意による捜査中止の決定に対する判断
ローマ規程第53条により、予審裁判部は、検察官が①独自の判断で、又は第14条に基づいた②案件を付託した締約国の要請、あるいは第13条に基づいた③国連安全保障理事会の要請により捜査中止を決定した場合、その決定について予審裁判部としての判断を下すことができます。
3. 逮捕状および召還状の発行
予審裁判部は、検察官の要請により、①逮捕状や裁判部への出頭を命じる召還状の発行を指示することができます。このとき、②公判に関わる全当事者の権利およびプライバシーを保証するための措置の発動や、必要であれば③被害者や証人、逮捕者や出頭者、証拠品や当該国の安全保障上の機密などを保護するための措置の発動を行うこともできます。
4. 公開審問の運営管理
『手続き及び証拠規則』の第115規則に従い、予審裁判部は審理手続きを定める権限を有し、締約国に審理の開始を指示することができます。
被疑者が任意に出廷するか、被疑者が引き渡されてから適当な期間を置いた後、予審裁判部は、①検察官、被疑者、およびその弁護人同席のもとで審問を行い、②起訴事実についての確認・棄却を決定することができます。
このとき、予審裁判部は検察官に対し、①起訴事実を固めるに十分な証拠の提示を求めることができ、②被疑者はこれを否認し、検察官の提示する証拠に対する反証を行う権利を認められます。