国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

【シエラレオネ】ICCに裁判場所提供を要請?(2006.03.30)

国連のシエラレオネ特別戦犯法廷がICCに裁判所貸与を要請?

リベリアテーラー元大統領を収監しているシエラレオネ特別法廷はこのたび、国際刑事裁判所およびオランダ政府に対し、フリータウンで元大統領の裁判を実施するのは安全面で問題があるとし、ハーグに場所を移しての裁判を許可するよう要請した。
国連広報センター、2006年3月30日のダイジェストより

国連より、上記のような奇妙なニュースが入っています。国連との協定で特別戦犯裁判所の設置に踏み切ったはずのアフリカ北西部の国シエラレオネ外務省基本情報)が、裁判の実施のみをハーグの独立国際司法機関である国際刑事裁判所(ICC)でできるよう要請しているというニュースです。


ICCは要請を受けるのか─その効果と影響

確かに、ICCは国連との協力協定を別途結んでおり、必要に応じてお互いが協力し合うことになっていますが、国連との別途の協定で実際に国家が裁判所を設置したのに、安全上の問題で裁判を実施するのが難しいという理由でICCに裁判の実施だけを求めるというのは想定外の事態であり、またICCの存在意義を軽視するものです。

一方、31日付けの本家国連公式サイトの広報ページでは、国連スポークスマンの日次報告のダイジェストから以下のように報じています。

At UN headquarters, the Security Council discussed the proposed transfer of Charles Taylor to a facility outside Sierra Leone, while remaining under the Special Court’s responsibility.

国連本部の安全保障理事会では、テーラー元大統領の身柄をシエラレオネ以外の国外施設に移送しつつ、[裁判権を]シエラレオネ特別法廷の管轄に置くとすることについて協議が交わされた。

この「国外施設」がおそらくハーグのICCのことなのでしょうが、ハーグではこのような事態は想定していなかったので対応に大わらわになっていることでしょう。現在のところ、ハーグからもCICCからも、そして国連からも公式なプレスリリースはありません。しかしこれをハーグが承諾すれば、国連安保理でまたICCの有効性が認められた前例となり、あまり良い言い方ではないですが1つのアピールにはなります。ただ同時に、独自の捜査機関を持ち、独自の判断で捜査・訴追を行えるはずのICCが、単なる裁判所貸与のために安保理に利用されるというのは、実は情けないような話でもあり、そのような要請に嬉々として応えるというのも、ICCの支持者としてなんとも複雑な思いがします。