国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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【リビア】ICC検察官、安保理決議1970に基づく捜査開始を表明(2011.03.03)

2011年3月3日
報道資料
ICC検察官がリビアに対する刑事捜査の開始を発表
リビアが六番目の捜査案件に

何が:2011年3月3日国際刑事裁判所ICC)のルイス・モレノオカンポ検察官は、リビア国内における最近の情勢について初期調査を行ったところ、犯罪が行われたことを疑うに十分な理由があるとして、同国に対する捜査を公式に開始したことを発表した。この発表は、2011年2月26日に国連安全保障理事会で採択された決議1970に基づくもので、同決議はリビアに関する事態の捜査と訴追をICC検察官に付託した。リビアは、スーダンコンゴ民主共和国中央アフリカ、北部ウガンダケニアに次ぎ、6番目の捜査案件となる。

何故:
全会一致で採択された決議1970で、安保理リビアにおいて、文民に対する組織的かつ広範な攻撃が行われており、これがICCが管轄する人道に対する罪に該当するのではないかと判断した。ICCは国連とは独立した機関であるため、ICCへの付託は自動的に捜査が開始されることを意味するものではない。そこで検察官が初期調査を行った結果、捜査を開始するに十分な根拠が見られると判断された。検察官は前日の2011年3月2日に、そのような根拠があることを発表した(ICC検察局プレスリリース)。

今後:  捜査の結果次第で、検察官は案件の捜査結果をICC予審裁判部に報告し、提出された証拠に基づき逮捕状を発行するか否かが判断される。また検察官は今後2か月以内に、6か月に1回の割合で国連安保理に報告することを義務づけられている。

このプレスリリースの後の展開は次の通り。

現在:  2011年3月7日、案件は裁判所長判断により予審裁判部第一法廷の担当となった。
同法廷の担当判事は次の3名であるICC書記局プレスリリース)。


2011年4月9日現在、ICCは国連の人権理事会が設置したリビア事実調査委員会に協力を要請し、現地捜査を代行して貰っている状況にある(最近の報道)。ICCは独立した条約機構でありリビアはその加盟国ではないため、いかに安保理決議があろうと実質的に協力を強制する力がないためである。ただし、2011年3月17日文民保護(保護する責任履行)のための武力行使を容認する安保理決議1973が採択された為、これによりICCの強制力は以前よりも担保されたことになる。そこで、国連人権理事会の権限により各国の協力で十分に証拠が集められれば、ICCはこれを予審裁判部で審議して逮捕状発行の可否を判断できる。

しかし、ICCの思惑とは裏腹に国際社会には国際社会の思惑があるため、逮捕状発行、訴追、逮捕に至るまではまだまだ紆余曲折は予想される。

参考: