国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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解説「ICCの機構─③b検察局(職務と権限)」(2007.04.01更新)

ICCの機構─検察局(The Office of the Prosecutor)

www.icc-cpi.int

以下は、旧ICC公式サイトでの「検察局(The Office of the Prosecutor)」の説明の Mandate の部分をJNICC勝見が独自に翻訳したものを、外務省の正訳公開い伴い新たに再編成したものです。この項に挙げる事項の厳密な規定については、ローマ規程の第15条および第42条を参照してください。

 

検察局の職務

検察局(以下、OTP)の職務は、ICCの管轄権に属する3つの犯罪(ジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪)についてその捜査と訴追を行うことです。現在は管轄に属さないが懸案となっている第4の犯罪、侵略犯罪(Crimes of Aggression)については、締約国会議(ASP)でその定義が確定した後に、OTPにこの犯罪についても捜査と訴追の権限が認められることになります。

 

OTPは、捜査および訴追を行うことで、ICCの設立目的である国際社会における重大な犯罪の実行者に対する免責に終止符を打つことと、そのような犯罪の抑止の実現に貢献することをその職務とします。
 

検察局の現在の構成・人員などの詳細については、こちらを参照してください。

 

訴追手続き

OTPの検察官(Chief Prosecutor) は、ICCの管轄犯罪が行われたという合理的な確証のある案件が付託された場合に、捜査を開始できます。このような案件の付託は、締約国会議からの付託、または国連安全保障理事会において国際平和と安全に対する脅威に対する措置としての行動のいずれかによって行われた場合のみ受理されます。主席検察官は、捜査を開始する判断を下す前に、ローマ規程および手続きと証拠の規則(Rules of Procedure and Evidence)に従って、付託された案件に付随する証拠文献などの書類及び事実関係を精査しなければなりません。

 

検察官は、ICCの管轄権に属する犯罪に関する締約国や国連安保理による付託情報のほかに、個人や非政府組織(NGO)などのほかの情報源を検討することも認められています。検察官は、提供されたこれらの情報について予備審査を行い、これらの情報について訴追を行う合理的な理由があると判断された場合は、捜査開始の承認を予審裁判部(Pre-Trial Chamber)に申請します。

 

ローマ規程に定められるその職務に基づき、OTPは以下の3つの部門から構成されます。
  1.  捜査部門(Investigations Division)
  2. 訴追部門(Prosecutions Division)
  3. 管轄、補完性及び協力統括部門(Jurisdiction, Complementarity and Cooperation Division (JCCD))

捜査部門(Investigations Division)の権限

捜査部門の権限は、①証拠の収集と②審査、捜査対象、被害者及び証人の尋問など、捜査に関連する業務の統括・遂行です。OTPがこの権限を遂行するにあたり、ローマ規程は、真実を確立するために(A)容疑の立証に役立つ事実と(B)疑惑解消に役立つ事実の両方について捜査を徹底することを求めています。

訴追部門(Prosecution Division)の権限
訴追部門の権限には捜査業務も含まれます。但し、その主な権限は、ICC内の各法廷に対し起訴手続きを行うことにあります。

管轄、補完性、協力統括部門(JCCD)の権限
JCCDの権限は、捜査部の協力を得ながら付託案件や提供情報などについて精査を行うことにあります。またOTPの活動を円滑に進めるために各国、各機関との協力関係の確保も、その権限の1つです。