国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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解説「ICCの機構─③a検察局(組織)」(2012.06.17更新)

ICCの機構─検察局(The Office of the Prosecutor)

以下は、国際刑事裁判所(ICC)公式サイトでの「検察局(The Office of the Prosecutor)」の説明、および補足として同サイトの検察官(The Chief Prosecutor)捜査担当次席検察官(Deputy Prosecutor of Investigations)訴追担当次席検察官(Deputy Prosecutor of Prosecutions)の説明をJNICC勝見が独自に翻訳したものを、外務省の正訳公開に伴い新たに再編成したものです。この部門に関する厳密な規定については、ローマ規程の第42条を参照してください。

検察局の組織と幹部の略歴

検察局(以下、OTP)は、ICCを構成する4部門のうちの一つですが他の部門とは独立しています。締約国会議によって選出された検察官(Chief Prosecutor)がその統括責任者を務め、人事、施設およびその他OTPに関わる全ての資産についてその全管理運営責任を負います。OTPは捜査部(Investigations Division)訴追部(Prosecutions Division)の2つの部門から構成され、それぞれの部門の責任者を別の2名の次席検察官(Deputy Prosecutor)が務めます。

2011年12月13日、初代検察官のアルゼンチン出身のルイス・モレノオカンポ氏(後述)任期満了に伴い退任するため、締約国会議で第二代検察官としてガンビア出身のファトゥ・ベンソウダ(Fatou Bensoudao)女史が選出され、翌2012年6月15日、同氏はローマ規程第45条の規定に従って宣誓を行い、正式に就任しました。女性としては初の検察官への任用になります。

http://www2.icc-cpi.int/NR/rdonlyres/F733EC27-FFE3-4B67-A8C8-C3C759532C59/0/Bensouda_small.jpg
ベンソウダ検察官
国際刑事裁判所検察局訴追担当次席検察官
元国連ルワンダ国際戦犯法廷(ICTR)法律顧問兼法廷弁護人

略歴
1987~2000年
  • ガンビア政府の検事局次長(93~97年)、法務次官(96~98年)、上級法律顧問、最高法律顧問、、司法長官、法務大臣(98~00年)を務める
  • 西アフリカ諸国共同体(Economic Community of West African States:ECOWAS)、西アフリカ議会およびECOWAS法廷で私設弁護士として交渉約を務める(00年3月~02年1月)

    2002~2004年
  • ガンビアの国際商業銀行(International Bank for Commerce and Industry)の本部長職を務める(02年1月~02年5月)
  • 国連防犯会議の代表団、アフリカ統一機構(Organization of African Unity:OAU、現AU)の人権に関する閣僚級会議に政府代表として参加
  • 国際刑事裁判所の準備会合でガンビア政府代表団の一員として参加
  • 国連ルワンダ国際戦犯法廷(International Criminal Tribunal for Rwanda:ICTR) で法律顧問、上級法律顧問、法律顧問部室長を務める(02年5月~04年10月)
  • 国際海洋法学修士号を保持し、ガンビア初の国際海洋法の専門家でもある
  • Contemporary Africa Database(アフリカ人物データベース)より補足

    2004~2012
  • 国際刑事裁判所検察局で訴追担当次席検察官を務める

  • その他参考サイトなど:
    2003年9月9日、締約国会議は、検察官の推薦する公募者のリストから2名の次席検察官を選出。捜査担当次席検察官(Deputy Prosecutor of Investigations)には、ベルギー出身のセルジュ・ブラメーツ(Serge Brammertz)氏が、訴追担当次席検察官(Deputy Prosecutor of Prosecutions)には、ガーナ出身のファトゥ・ベンソウダ(Fatou Bensouda)女史(現検察官)が選出されました。ところが2006年1月、ブラメーツ次席検察官はアナン前国連事務総長の任命により、ハリリ・元レバノン首相の暗殺事件について調査する国連独立調査委員会の特別指揮官(コミッショナー)の任に就いたため、分析課課長のミシェル・ド・シュミッド(Michel De SMEDT)氏が急遽、捜査担当次席検察官に任命されました。しかし、元々捜査担当の分析官だったため、検察官としては不適格として代理検察官の任を解かれ、捜査部部長(Head of Investigations Division)に新たに就任しました。以来、OTPの「捜査担当次席検察官」は事実上空席となりました。




    尚、2012年6月現在、ベンソウダ検察官の昇進に伴い「訴追担当次席検察官」は空席となっており選考中とのことです。現在、OTPでは捜査部門のみ、その長がいることになります。


    略歴全経歴(PDF)
    1984~1992年
  • 検事補としてアルゼンチン陸軍司令官らを「汚い戦争」の謀略容疑で訴追する軍事政権裁判に参加
  • アルゼンチン軍元将軍のCarlos Guillermo Suarez Maso容疑者の米国からの身柄引渡し交渉を担当
  • アルゼンチン国内での反政府ゲリラ闘争に関わった指導者たちを捜査及び訴追
  • マルビナス/フォークランド戦争における陸軍司令官らによる戦時違法行為を訴追
  • その他汚職に関する案件を担当

    1992年~2003年
  • ブエノス・アイレス連邦犯罪法廷の検事を辞任
  • 主に大企業の汚職防止と刑事訴訟、人権侵害案件を取り扱う私設法律事務所「Moreno-Ocampo & Wortman Jofre」を設立。ICCの検察官に選出されるまで、弁護士および大企業の私的監察官として働く

  • 前捜査担当次席検察官

    http://www.icty.org/x/image/Press/Photo%20Gallery/Officials/Prosecutor/Brammertz_tn.jpg
    セルジュ・ブラメーツ氏
    旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷検察官
    元国連独立調査委員会特別指揮官
    元ベルギー連邦検事

    略歴仏語全経歴(Word文書)
    1996~1997年
  • オイペン(ベルギー)でEUのCourt of First Instance(欧州第一審裁判所)で検事補・検事を務める
  • リェージュ(同)の上訴裁判所で次長検事を務める

    1997~2002年
  • ベルギー連邦検事を務める
  • リェージュ大学法学部教授を務める

    2002~2004年
  • 欧州評議会で組織犯罪に対する国内対策の国際適用を研究する機構の創設に関わる*欧州委員会の司法内務委員会に在籍
  • 国際移住機構(IOM)の顧問を務め、主に中欧およびバルカン諸国における超国家的汚職および人身売買に関する研究を指揮
  • 国際テロ、組織犯罪および汚職に関する著書・論文多数