国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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【語録】現役官僚からの提言(1)─外務省国際法局付検事

日本が国際刑事裁判所ICC)に加盟する意義

第一の意義
第一の意義は、不処罰の文化を許さないという決意を国際社会に対して明確に表明することである。法治国家を自任し武力による紛争解決を拒絶する我が国として、ICCに加盟することはごく自然な行動であろう。ICCの活動は、不戦を誓い平和を希求する我が国の理念と軌を一にする。

第二の意義
第二の意義は、ICCの制度作りや運用に参加することによって我が国の法制度の優れた点をICCに反映させ、同時にICCの制度・運用が我が国のそれと相容れない方向に向かわないよう舵取りすることである。
(中略)ICCは今後、国際刑事裁判の分野における国際標準を定める役割を担っていくと予想される。
(中略)ICCの制度作りへの参加を通じて我が国の制度がICCの制度や運用に影響を与えるとすれば、それは我が国の法制度と国際標準との溝を狭めることにもなり、国益に資する。

第三の意義
第三の意義は、ICCに対する国際協力義務の担い手となり、証拠の提供その他の実務的な側面において、国際社会の重要な一員としての立場にふさわしい責任を担うことである。
(中略)ICCが正義の実現、法の支配の貫徹、紛争予防及び平和構築など、国際社会共通の利益に資する世界全体の基本インフラの一つというべき役割を担っている以上、その運用に主体的に参加することは、大国としての我が国の権利でもあり義務でもあろう。

著:野口元郎
外務省国際法局付検事、国連アジア極東犯罪防止研修所教官
『国際刑事裁判所は今~日本の加盟が果たす意味~』
論座 2006年1月号)より