国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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【資料】国際刑事裁判所(ICC)早期批准を求める要望書(2006.06.07提出)

以下は、2006年6月7日付けで政府各省庁代表宛てに共同提出された、自民党公明党の有志による国際刑事裁判所ICC)への早期批准を求める要望書(提言)の全文です。
 

日本が国際刑事裁判所に早期(2007年度を目指して)加入することを求める提言
2006年6月6日

○○○○ ○○○○殿

自民党国際刑事裁判所ICC議員連盟
代 表    高村 正彦

公明党ICC早期加盟を推進する小委員会
委員長    荒木 清寛

                  骨 子

自民党の『国際刑事裁判所ICC議員連盟』と、公明党の『ICC早期加盟を推進する小委員会』は、国際社会における重大な犯罪行為の撲滅と予防、法の支配の徹底を目指すため、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド等を犯した犯罪者の実効的な処罰を目的とする国際刑事裁判所に日本が早期に(2007年を目指して)加入すべきであると考える。このため、政府は2006年度中に関係国内法の整備や分担金の予算措置について目途をつけるべきであると考える。


                 提言内容

一、    国際刑事裁判所ICC)への早期加入についての提言

国際刑事裁判所ICC)とは、国際社会にとって最も深刻な罪『集団殺害(ジェノサイド)、拷問・レイプ・奴隷化などを含む人道に対する罪、戦争犯罪など』を犯した個人を国際法に基づき訴追し、処罰するための常設の国際刑事法廷である。我が国は、国際社会における最も深刻な犯罪の発生を防止し、もって国際の平和と安全を維持する観点から、一貫して国際刑事裁判所の設立を支持してきた。同裁判所の設立条約を採択した1998年の外交会議においては、日本政府代表団は異なる各国の立場の調整に尽力し、同条約の採択に大きく貢献した。しかし現在、日本はこの条約を未だ締結していない。
ICCへの加入は、わが国として国際社会の最も深刻な罪の不処罰を許さないという決意の表明である。アジアの主要国であるわが国の加入は更に多くの国が加入することを促進し、重大犯罪を犯した犯罪者に対する国際的な包囲網を広げることに貢献すると考えられる。国際社会における重大な犯罪行為の撲滅と予防、法の支配の徹底のために、日本が早期にICCの締約国となってこれを支えていくことには大きな意義がある。

2009年にはICC設立条約の「見直し会合」や裁判官選挙が予定されている。同「見直し会合」においてはオブザーバーとしてではなく、締約国として投票権を有して参加することが望ましい。また、この裁判官選挙を経て日本から裁判官を輩出するためには、立候補者指名や選挙活動の期間を考慮する必要があるため、できるだけ早期に(2007年を目指して)ICCに加入すべきである。


二、    主要な課題への対処についての提言

ICCに加入するためには、関係する国内法を整備するとともに、加入後の分担金の負担について政府が予算措置を講じる必要がある。2007年通常国会ICC設立条約と関連法案を審議する状況を整えるため、以下のような取組により、政府が国内法整備や分担金の負担について2006年度中に目途をつけるべきである。

(1)    国内法整備について

 ICC設立条約は、犯罪人引渡し、証拠の提出、罰金・没収、被害者に対する賠償命令の執行をはじめとして、締約国がICCに協力するための手続を確保することを義務づけている。また、対象となる犯罪として集団殺害(ジェノサイド)、拷問・レイプ・奴隷化などを含む人道に対する罪、戦争犯罪などを掲げている。

これらの犯罪行為は我が国の現行の国内法で基本的には処罰できると考える。もっとも、現実にはおよそ発生しないと考えられる行為まで精査すれば、あらゆる行為が現行の国内法によって処罰できるとは言い切れないと承知している。しかし、同条約は、ICC対象犯罪を例外なく処罰できるよう国内法を整備することまでは締約国に義務づけていないため、ICC対象犯罪になり得る行為を完全に網羅的に国内で犯罪化する必要はないと考える。

わが国が早期にICCに加入する観点から、主にICCに協力するための国内手続を確保する立法措置をとる方向で政府が迅速に作業を進め、2006年度中に国内法整備の目途をつけるべきである。


(2)    加入後の分担金の負担について

 ICCに加入すれば、国連の分担率をベースに相応の予算の分担の義務を負うことになるので、予め政府が予算措置を講じる必要がある。

ICCには米国が加入していないため、日本が加入した場合の分担率は高くなり、ICCの2006年度予算(約110億円)をベースに試算すれば日本の分担金は約30億円になると承知している。ICCは発効してから4年目を迎え、活動が本格化していることから毎年の予算額は増えており、今後、相当程度増加していくことが予想される。ICCに加入すれば、これに応じた日本の分担額を毎年払うことになる。

この点、既に刑事分野の国際裁判所全体に対する日本の分担金は巨額であるという指摘もある。例えば、2006年度の旧ユーゴ国際刑事裁判所ICTY)・ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)の分担金は約55億円(2006年)である。ただし、これらの裁判所は2010年までの完了戦略をかかげており、現在、この実現を目指して運営合理化と経費節減に務めていると承知している。なお、2006年末までに国連の分担率交渉が行われるため、この結果、仮にわが国の国連分担金の負担が有意に減少すれば、その分を他の国際機関に拠出できる余地が生じると考える。

わが国の厳しい財政事情はあるが、日本がICCに早期に加入する意義の重要性にかんがみ、ICCの分担金の負担のための予算措置につき、政府全体で取り組み、2006年度中に目途をつけるべきである。

 

以 上