写真:ファン登録された方だけに公開。中国ICCアジア会議での女性参加者勢ぞろいの写真です。こうした活動には女性の数が圧倒的に多いことが見て取れると思います。
以下は、中国の貴州省貴陽市で開かれた、北京師範大学の王秀梅助教授主催の①「国際刑事法ワークショップ」と、貴陽大学の招待で実現した②「CICCアジア主催の地域専門家会議」の2つの会議に関する、このブログのみでファン登録されている皆さんにだけ公開する出張報告です。今回は、②の地域専門家会議の大まかな“概要”からご案内いたします。
地域専門家会議(以下、ミーティング)には、アジアから韓国、中国、タイ、ミャンマー、ベトナム、インド、パキスタン、バングラデッシュ、ネパール、カンボジア、スリランカ、モンゴル、マレーシア、フィリピン、そして日本の15カ国のNGOや市民団体の代表が一同に介しました(空覚えなのでどこか抜けてるかもしれませんがあしからず…)。さらにカナダから外交官を1名、専門家を1名招き、アメリカからはCICCのアジア地域担当者が2名、フィリピンのANICC(アジアICCネットワーク)の代表が1名参加し、アシスタントや王助教授の生徒たち学生を含め総勢約25名程の規模でミーティングは行われました。大体、地域会議としてはこのくらいが平均的な規模ですが、参加者のほとんどが女性というのが、こうしたNGO活動の実情です。男性は私を含め、9名ほどしかいませんでした。いやはや、人権関連の運動はまさに女性の独壇場のような世界です。
ミーティングで討議される報告の内容やテーマ
ミーティングでは毎回、①各専門家による基調講演、②国別報告と、③準地域・地域別総括、④質疑応答や⑤オープン・ディスカッション、そして⑥準地域・地域別戦略会議が行われ、アジア全体の状況を各参加者が把握し、地域や準地域レベル(たとえば、南アジア、東南アジアなど)で活動を連携する方法や各国担当者間で相互に協力する方法などが模索されます。しかしこれだけのアジェンダを、与えられた2日間で消化するのはいつも至難の業で、会議の日程を一日くらい延ばせないものかといつも問題になるのですが、実際は日程的にも経済的にも3日間の会議とホテルの宿泊代・食事代を用意するのはCICCにとっても大変なことなので、現実的な妥協として2日間という期間が、この6つのアジェンダをこなすために与えられた期間ということになります。ミーティングでの主要なテーマは、以下の4点に大別されます。
①ICCの現状の把握(取扱い中の案件やASPでの決定、懸案事項、課題) ②BIA(※)の現状の把握(米国の反ICC政策の現状の傾向と対策) ③アジア地域の現状の把握(人権状況、政情、懸念事項、支援要素) ④戦略会議(アジア全体、地域レベル、準地域レベル、国家レベル)
この中で最も重要視されるのが②と④で、開発途上国の多いアジアではアメリカの動きをまったく無視できません。なぜなら多くの国がアメリカの経済・軍事支援を受けており、その経済がほとんどアメリカとの貿易によって成り立っているからです。つまり、アジアの国々のNGOにとっては、BIA(二国間免責協定※解説)などのアメリカの反ICC政策に対するアンテナを常に磨いておかないと、死活問題になるということです。
アメリカの政策の推移によって、政府の対応や取締りが変わり、④の戦略会議の内容が大きく影響を受けるのです(具体的に国別にどのような影響があるのかについては、後述します)。
アメリカの政策の推移によって、政府の対応や取締りが変わり、④の戦略会議の内容が大きく影響を受けるのです(具体的に国別にどのような影響があるのかについては、後述します)。
日本に求められる役割
このように、ICCなどの国際条約に対するアメリカの反対というものは、国際社会に大きな影響を与え、途上国ではとくにそれが甚大なものとなります。日本やEUなどの先進国は、NATOや日米安保といった軍事同盟により、アメリカによる軍事・経済支援の取消しというリスクを負わずに済む恵まれた立場にあります。しかし韓国を含むアジアの多くの国は、そうした恵まれた立場にないのです。 韓国はすでに準先進国扱いの国ですが、米軍再編による大幅な兵員削減、基地の撤収と横須賀への極東軍事拠点の移転は、ICCに加盟し、さらにBIAに署名していない韓国に対する「制裁」だったとすら言えるかもしれません。そして、さすがに日本も、アメリカに対してはそうそう強気に出れるものではありません。
韓国から撤退した兵員の受け入れ先として日本ではご存知のように基地移転の交渉を行っており、国民や地方政府の要請を政府側はまったく無視する暴挙に出ています。こうした暴挙の背景には、アメリカとは他のアジアの国に比べれば対等な立場にありつつも、簡単に「NO」といえない日本の特殊事情というものがあります。この事情により、政府は主権在民よりも日米関係という国益を優先せざるを得なくなるわけです。そして、そのような問題を共有するアジアの国々はこうした日本の事情には理解を示した上で、アジアではそれでもリーダーシップを発揮してもらいたいと思っているのです。その姿勢はICCの推進キャンペーンにおいても変わりません。