国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

【ダルフール】ICC予審裁判部がバシル大統領の逮捕状発行を承認

国際刑事裁判所スーダンのバシル大統領への逮捕状発行を決定

上記ニュースにあるように、昨年末より国際刑事裁判所ICC)予審裁判部はスーダンオマル・ハッサン・アハメド・バシル(Omar Hassan Ahmed al-Bashir)大統領に対する逮捕状発行を検討しておりましたが、11日付けのニューヨークタイムズ紙(NYT)によると、同予審裁判部は逮捕状発行を決定しその旨を国連関係者に報告したそうです。ICC側からの公式な発表はまだ出されていませんが、信頼のあるNYTの報道が事実であるとすれば、ICC史上初の現職国家元首の訴追が実現したことになります。

推測ですが、今回の逮捕状発行は過去のウガンダ共和国の案件同様、まずは秘密逮捕状としての発行の許可が下りたのであり、これが公開逮捕状として発表されるのはまだ先の話であるという見方ができると思います。

【コメント】
 逮捕状発行の決定は、「発行は和平プロセスへの障害となる」とするアラブ・アフリカ諸国の根強い反対を押し切っての重大な政治的決断となるだけに、国際社会全体の理解と協力が不可欠になります。アラブ・アフリカ諸国は国連の中では60数カ国に及び、ICC締約国会議の中でもアフリカ圏の加盟国数は30カ国と、欧州地域に次ぐ最大の批准地域でもあります。このようなすう勢の中、国連安全保障理事会は昨年12月の段階で、(原文記事:NYT、2008年12月3日付け)非公式協議の中で逮捕状発行に対する支持を表明(但し、アフリカ諸国のリビア南アフリカは強く反対し、ロシアと中国は訴状発行のタイミングに対する憂慮を表明)。なかでも注目すべきは米国の支持表明で、ローズマリー・ディカルロ(Rosemary DiCarlo)特使は「国際社会は渦中のダルフール紛争で行われた残虐行為や人道的悲劇を見過ごしてはならない」("The international community cannot ignore the atrocities and massive human suffering that have occurred during the ongoing conflict in Darfur,”)と述べています。中村公政の『ダルフール・ニュース』によれば、オバマ政権で新たに閣僚級待遇で国連大使に就任したスーザン・ライス(Susan Rice)女史は、米閣僚としては史上初めてICCへの支持を公言(演説全文の原文)しており、中村氏が洞察するように、米国のICC支持により、ローマ規程第16条の規定に基づいた安保理による訴追延期の決定がなされる可能性は薄まりました。安保理を含む今後の国際社会の動向が注目されます。