以下は、本ブログでの一連の質問に対する私なりの見解をまとめたものです。
Q1: 民主党のホームページに以下の記事があります。 『小沢一郎代表 テロとの戦いの疑問に答える』 この中の発言で、それぞれ別の質問への答えですが以下のようにあります。 ①憲法第9条は、国権の発動たる武力の行使を禁じています。国際紛争を解決する手段として、武力の行使を認めていません。私は、日本が自衛権の行使、つまり武力の行使ができるのは、我が国が直接攻撃を受けた場合、あるいは我が国周辺の事態で放置すれば日本が攻撃を受ける恐れがある場合に限る、と解釈しています。 ②国連の決議によってオーソライズされたもの、アフガンで言えば、ISAFは憲法に抵触しないので、政権を担い、外交・安保政策を決定する立場になれば、参加を実現したいと考えています。国連の平和活動に積極的に参加することは、たとえ結果的に武力の行使を含むものであっても憲法に抵触しない、むしろ憲法の理念に合致すると考えています。 ①と②に矛盾はありませんか?私には同じサイトにこのふたつの回答が載っていること理解できせん。okirakunyaoさんより
A1:
まず①と②それぞれについて咀嚼してまとめますと、①については以下のようなポイントを挙げていることになると思われます。
1.日本は国権の発動による武力行使ができない。
2.日本は個別的自衛権しか行使できない。
次に②については、以下のようなポイントになると思われます。
1.ISAFは国権の発動による武力行使ではない。
2.政権党になったら必要な措置を行ってISAFに参加したいと思う。
3.国連の平和活動である場合は、国権の発動による武力行使には当たらない。
4.平和活動に参加することは憲法の理念に合致する。
このようなことだと思われます。
この場合①の中の主張1は、②の主張1と3と整合していると思われます。すなわち、
日本は国権の発動による武力行使ができない。
↓
ISAFは国権の発動による武力行使ではない。
↓
∴日本がISAFに参加することは国権の発動ではない。
という三段論法です。
論理としては矛盾していないと思われます。問題なのは、「国権の発動」というキーワードでしょう。この概念の解釈によっては、上記の三段論法は成り立ちません。が、この論文の最大の問題は、「国権の発動」が何であるかを説明していないことにあります。だから、混乱が生じてしまっているのでしょう。
ここでの不十分な説明については、このように補足できます。
『憲法第九条第一項の「国権の発動たる」とは「国家の行為としての」という意味であり、同項の「戦争」とは伝統的な国際法上の意味での戦争を指すものと考える。したがって、同項の「国権の発動たる戦争」とは「国家の行為としての国際法上の戦争」というような意味であると考える。
もっとも、伝統的な国際法上の意味での戦争とは、国家の間で国家の行為として行われるものであるから、「国権の発動たる戦争」とは単に「戦争」というのとその意味は変わらないものであり、国権の発動ではない戦争というものがあるわけではないと考える。』'
出典:「戦争」、「紛争」、「武力の行使」等の違いに関する質問主意書 (その答弁書)
なんともまわりくどい答弁ですが、これが平成14年(2002年)当時の正式な政府答弁なんですね。つまり、憲法が禁止している「国権の発動たる戦争」とは従来の意味で国家間で行う戦争を、国家が国権を発動して行うことを禁じるということなのです。
国連の集団安全保障措置に基づいて設置されたPKOは、基本的に和平合意が一度達成されたことを条件に、平和維持任務のために派遣されます。その後、仮にその和平合意が崩れてしまったとしても、PKOは即時撤退するというわけにはいきません。「平和維持」の任務を帯びたまま、あらたに治安維持任務なども付加的に負っていくことになります。
アフガニスタンの場合、2001年12月4日には戦闘終結宣言がなされ、翌5日にはドイツのボンで和平合意が為されています。ISAFはこの和平合意の内容に基づいて編成され、その活動を国連安保理により承認されました。しかし、私自身が責任編集しているWikipediaの項目で指摘しているように、ISAFは正規の国連PKOではありません。これはISAF自体が認めていることで、公式サイトに「国連安保理に派遣を承認された有志国連合軍」であると書かれています。つまり、ISAFはこれまでのPKOの歴史からしても、やや変則的に作られた新しい形態の準PKO・準国連軍と位置づけられます。このような形態の部隊に、日本の自衛隊が参加できるのか、仮に憲法上、国連部隊への参加が「国権の発動による戦争」行為でないとしても、私は疑問です。
まず①と②それぞれについて咀嚼してまとめますと、①については以下のようなポイントを挙げていることになると思われます。
1.日本は国権の発動による武力行使ができない。
2.日本は個別的自衛権しか行使できない。
次に②については、以下のようなポイントになると思われます。
1.ISAFは国権の発動による武力行使ではない。
2.政権党になったら必要な措置を行ってISAFに参加したいと思う。
3.国連の平和活動である場合は、国権の発動による武力行使には当たらない。
4.平和活動に参加することは憲法の理念に合致する。
このようなことだと思われます。
この場合①の中の主張1は、②の主張1と3と整合していると思われます。すなわち、
日本は国権の発動による武力行使ができない。
↓
ISAFは国権の発動による武力行使ではない。
↓
∴日本がISAFに参加することは国権の発動ではない。
という三段論法です。
論理としては矛盾していないと思われます。問題なのは、「国権の発動」というキーワードでしょう。この概念の解釈によっては、上記の三段論法は成り立ちません。が、この論文の最大の問題は、「国権の発動」が何であるかを説明していないことにあります。だから、混乱が生じてしまっているのでしょう。
ここでの不十分な説明については、このように補足できます。
『憲法第九条第一項の「国権の発動たる」とは「国家の行為としての」という意味であり、同項の「戦争」とは伝統的な国際法上の意味での戦争を指すものと考える。したがって、同項の「国権の発動たる戦争」とは「国家の行為としての国際法上の戦争」というような意味であると考える。
もっとも、伝統的な国際法上の意味での戦争とは、国家の間で国家の行為として行われるものであるから、「国権の発動たる戦争」とは単に「戦争」というのとその意味は変わらないものであり、国権の発動ではない戦争というものがあるわけではないと考える。』'
出典:「戦争」、「紛争」、「武力の行使」等の違いに関する質問主意書 (その答弁書)
なんともまわりくどい答弁ですが、これが平成14年(2002年)当時の正式な政府答弁なんですね。つまり、憲法が禁止している「国権の発動たる戦争」とは従来の意味で国家間で行う戦争を、国家が国権を発動して行うことを禁じるということなのです。
国連の集団安全保障措置に基づいて設置されたPKOは、基本的に和平合意が一度達成されたことを条件に、平和維持任務のために派遣されます。その後、仮にその和平合意が崩れてしまったとしても、PKOは即時撤退するというわけにはいきません。「平和維持」の任務を帯びたまま、あらたに治安維持任務なども付加的に負っていくことになります。
アフガニスタンの場合、2001年12月4日には戦闘終結宣言がなされ、翌5日にはドイツのボンで和平合意が為されています。ISAFはこの和平合意の内容に基づいて編成され、その活動を国連安保理により承認されました。しかし、私自身が責任編集しているWikipediaの項目で指摘しているように、ISAFは正規の国連PKOではありません。これはISAF自体が認めていることで、公式サイトに「国連安保理に派遣を承認された有志国連合軍」であると書かれています。つまり、ISAFはこれまでのPKOの歴史からしても、やや変則的に作られた新しい形態の準PKO・準国連軍と位置づけられます。このような形態の部隊に、日本の自衛隊が参加できるのか、仮に憲法上、国連部隊への参加が「国権の発動による戦争」行為でないとしても、私は疑問です。