国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

【ハーグ】ICTYのミロシェビッチ被告死去の影響(2006.03.13)

裁判打ち切りと予算縮小の関連性─そして日本の批准促進の可能性


昨日11日未明、旧ユーゴ国際戦犯法廷ICTY:International Criminal Tribunal for former Yugoslavia)の拘置所で戦犯容疑で公判中だったミロシェビッチセルビア大統領が死去されたニュースが報じられました。死因は司法解剖により心筋梗塞と結論付けられていますが、毒殺の疑惑を解明するための毒物検査の結果については、未だ判明していません。関連記事

http://news.bbc.co.uk/olmedia/720000/images/_722577_hague2300.jpg
   ハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷(出典:英BBC

各報道は、これにより裁判が実質的に打ち切られるものと報じております。この件について、ICTYは公式声明を発表しておりますが、それは遺憾表明にとどまっており、今後の法廷の活動について同法廷の主任検察官は、ムラディッチとカラジッチの逮捕を一刻も早く実現すべきだと述べるに留めています(ICTYのプレス向け説明)。

ムラディッチ拘束については最近情報が錯綜しており、拡大EU加入を狙うセルビアとしては国家の体面を守りながらもEUに協力する姿勢を惜しみません。つまり、当局は両容疑者の確保に必死になっています(関連記事)。

 このような情勢のなかで指導的役割を担っていたとされる最大の親玉のミロシェビッチが死去し裁判が打ち切りになるということは、今後ムラディッチ/カラジッチの両量容疑者の確保にICTYおよびセルビア当局が総力を挙げてとりかかり、裁判の決着を早期につける可能性が極めて高くなったことを意味すると思います。
 ミロシェビッチ死去により裁判プロセスが残り二人の大物に集約されれば、今後の法廷の活動もその二人のみに絞られ、2010年までの閉廷は確実となることが予想されます。これはすなわち、日本の各省庁担当者が想定したICTY予算のICCへのスライドがより早期に実現する可能性を示唆しています。この時機を逸する手はないと思いますし、もし政府がICC加盟に本当に乗り気なら、このことは当然想定し、より前向きに予算交渉への取り組みを考えるでしょう。
 政府の姿勢が本気かどうか、明日の勉強会で明らかになりそうです。


外務省としては
①国連の分担金の比率を下げる交渉をしている。これが下がると、ICC分担金もリンクして下がる。
②現在日本はユーゴとルワンダ国際法廷のため年間50~60億円負担している。これが2010年までに終わることになってはいる。効率良い運営をして、早く終わらせるよう働きかけている。
これが終了すれば、ICCの負担金を払う余裕が出る。