国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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アフガニスタン国際円卓会議に関するQ&A(1)


ひとつお聞きしてよろしいですか?
<他の国で、他の団体により、同様の会議が主催される可能性があります。

オバマ大統領が、アフガン増派への新方針を打ち出すと聞きましたが、
これは増派ではなく、アフガン撤退への一歩となるのでしょうか?
既に鳩山総理とオバマ大統領との間では方向性が一致し、
今回の会議が国家間レベルへ昇格する道筋は見えているものと
勝手に思っていたのですが、まだ時期尚早なのでしょうか?
で、他の国が同様の会議を開く余地がまだあると言うことなのでしょうか?

掲示板でのレス
■1.米軍増派の問題
会議では、オバマ大統領の増派問題についても勿論話し合われました。
しかしこれはアメリカの大統領が戦略的理由で決めることなので、その結果にあまり左右されない方針を立てておくのが肝要だというのが会議での一致した見解でした。アフガン側の大統領側近によれば、マクリスタル米軍大将が46,000人規模の増派決定を行なった際、その場にカルザイ大統領を含めたアフガン側政府首脳も同席していたとのことです。そして、増派を認めるかわりに4つの条件を提示し、米軍増派が統合的アプローチの一環という位置づけでなければならないということで提案を受け入れたそうです。その4つとは、以下の通りです。
1)ANSF(※)の増量
2)ANSFの訓練強化
3)アフガン市民保護の優先
4)社会復帰の推進
※Afghan National Security Forces(アフガン治安維持部門)の略
会議に参加した軍関係者によれば、オバマ大統領が大幅な増派(34,000人規模)を決めるのは確実でNATO各国もこれに合わせて相応の増派(5,000人規模)を予定しているそうです。これは最近の報道でも確認されていることですね。しかし、実はISAFの現場では、既に増派の現実性を加味して作戦レベルでアフガン側の主張を受け入れる準備を固めていたことはあまり知られていません。すなわち、今回の増派については、その動員数にかかわりなく、アフガン側の上記の主張どおりの目的のための増派とすることが前提となっているということなのです。ここで、社会復帰を実現するには、和解の推進が必要なのは自明の理だとおわかりいただけるでしょう。
アフガン側としては、効果の少ない掃討作戦に人員を割くよりも、アフガン治安維持部門の強化・訓練のために是非増派してほしいとアメリカ側に要請したというのが実情なのです。つまり、アフガン側は自立したいのです。

■2.米軍早期撤退の思惑
アメリカ側の思惑には、アフガンの要請どおりの目的で活動するのならば増派した兵を撤兵させるのは難しくないという計算があるのかもしれませんが、それ以外の作戦に従事する部隊を撤兵させる道理には残念ながらなりません。
したがって、常に合理的な判断を行なうアメリカ政府のこれだけ重要な政治決定が、アフガン撤退を現実的視野に入れたものであるとは言い切れないと思います。日米両首脳の間で方向性が一致していても、国家は(アメリカほどの強大な国家でも)常に一枚岩ではないという前提を忘れてはなりません。とくにアメリカは、オバマ派の国務族と、依然としてネオコン派の国防族の間に歴然とした政策の不一致がみられるくらいです。たとえ二大経済大国の首脳が同じ方向性を見つめていても、それがスムーズに実現するかどうかは両国の政府間の垣根を越えた政治的意志の問題です。

■3.トラック1への移行時期
今回の会議が国家間レベル(トラック1)へ昇格する道筋については、敢えてまだそのトラックに至らないうちに、こうした非公式でかつ自由に討議できる場を増やしていくことのほうが大事なのだと思います。その上で、こうしたトラック2(非政府・実務者レベル)の会議をイヤになるくらい重ねてから、自然な移行としてトラック1にし、トラック2のこれまでの積み重ねがその後の流れを支配する、という流れを作る必要があると思います。

■4.他の国が同様の会議を開催する可能性
それまでの間、今回の参加国の中から「今度はうちがやりたい」という国が出たら、これは歓迎すべきであるし、そうでないとしても次回を再び東京でやるということも充分に想定できることです。重要なのは、「こういう会議が持てるんだ」という認識を各国の参加者に植え付けることが出来たということです。
いままで「できないに違いない」と思われていたことを「できるんだ」と知らしめることができた─私はそれが、今回私たちが各国参加者に与えることのできた最大の無形の貢献ではなかったのかと思っています。