国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

【転載】9条世界会議参加報告(分科会編)自主企画(下)

以下は、トラバ先同様、私・JNICC勝見自身ではなく、Yahoo!憲法関連の掲示板で知り合った、aiti2521さん(以後、アイチさんと呼びます)という護憲派の有志の方が転載を快諾してくださったアイチさん自身による分科会参加報告です。原則として、アイチさんの言葉そのままに転記しますが、より視覚的にわかりやすいレイアウトに改編することについても許諾頂いていますので、若干文字の修正等の変更も加えます。また、文中気付いた誤字脱字などがあったら、それらも適宜修正して転載しています。尚、アイチさんも私同様、参加者の発言などは一語一句を正確に書きとめたわけではなく、自分のとった走り書きメモの内容から回想してなるべく詳細に書き上げようとしているだけなので、一部実際の発表者の意図するものとは違う言葉や考え方になっている場合があることを予めお断りしておきます。ご了承ください。


③自主企画/憲法9条とメディア

主催マスコミ9条の会・韓国記者協会

<先ず司会の小中陽太郎氏(日本ペンクラブ)から基調意見>

小中陽太郎氏(日本ペンクラブ
 憲法をめぐって、日本のメディアは二重のねじれをおこしているのではないか。一つは政府与党の改憲論議におびえ、右派イデオローグの言説があたかも当世風かのような思いこみ。もう一つのもっと大きなねじれは、日本の社会の中に脈々と流れる、平和憲法への誇りとそれが踏みにじられようとしている事への市民の怒りを、全く見落としていること。
 このねじれを正すには2つの光があり、一つは世界の良識の中に憲法を置きなおしてみること。もう一つは市民の中に流れる憲法への思い入れを見据える事だと思う。

 <次に李成春氏(韓国記者協会元会長)から韓国のマスコミ・市民の日本の9条改憲への動きをどう観ているかの発言>

李成春氏(韓国記者協会元会長)
 韓国では憲法9条問題は、日本の国内問題として捉える見方が多い。メディアは基本的には自国の視点から相手国を見るが、特派員の能力やニュース作成にかける時間などの制約から、相手国の主要メディアの論調にも影響される。その点から言えば、日本の国内問題としてのみ捉える見方は、一つは韓国内の無関心の反映でもあるが、同時に憲法問題を論じる日本のメディアの論調が、東アジアを含めた国際的平和や人権といった普遍的価値の問題というより、「自衛隊の位置づけ」とか「対米関係のあり方」をめぐる政治的争いの問題として日本という枠の中でのみ論じていることの反映でもある。
 9条を韓国の視点から解釈すること、特に朝鮮半島の平和定着との関係を模索する中で、韓国でも大きな意味を持ちうる。

伊藤千尋氏(朝日新聞)の中南米での経験からの発言>

伊藤千尋氏(朝日新聞
 世界は憲法を使っている。例えばベネズエラでは、露天の店で憲法や法律の古本が売られている。貧しい人が買っていったりする。自分達の生活を守る為の闘いに必要なものと多くの人が知っているし、生かしている。長らく続いた親米政権下での新自由主義政策の結果、多くの国民が益々貧しい生活を強いられ、ここに来て反米左派政権が次々に誕生しているが、決してチャべスは突然現われたわけではなく、そうした国民の意識がチャべスのような大統領を誕生させた。果たして日本人は憲法を活かして来ただろうか?空気のようなあって当たり前のものと思っていなかったか?もう「護憲」の時代ではない。「活憲」を一人一人が考えるべき時ではないか。

桂敬一氏(日本ジャーナリスト会議)のメディアの憲法への立場の変化についての発言>

桂敬一氏(日本ジャーナリスト会議
 日本のメディアは憲法戦後民主主義により生み育てられてきた。そうした一貫した流れが大きく変わってきたのは84年位から。読売新聞でナベツネが編集の主導権を握った辺りからで90年の湾岸戦争勃発でそれが決定的となった。既成事実としての「改憲論議に国民もメディアも馴らされてきた。そして小泉内閣の出現と「郵政選挙」での自民党圧勝、安倍内閣での「国民投票法」と改憲前地ならしはほぼ完了した。この時期、例えば05・06年の憲法記念日の新聞各社の論調をみると明確な「護憲」の論陣を張る新聞はほとんどない。「朝日」ですら「護憲的論憲」という論調だった。ところが昨年(07年)又大きく変わってきた。全国紙・地方紙45社47紙について社説・論説欄を調べたところ次のような結果になっている。

①9条を中心に「護憲」 18社20紙(朝日・中日/東京・北海道等、発行1804万部
②9条を中心に「護憲的論憲」 20社20紙(毎日・京都・神戸等、発行889万部)
③9条を中心に「改憲的論憲」 0社
④9条を中心に「改憲」 4社4紙(読売・日経・産経・北国、発行1531万部)
⑤立場不明の「論憲」 3社3紙(福島民友・静岡・下野、発行124万部)

 この変化の底流には、世論の変化がある。与党圧倒的優勢の流れが、「格差」と安倍政権の「年金問題」での躓きから、参院選自民大敗、政権放り出しで完全に変わったこと。イラクへの給油転用疑惑。米兵の凶悪犯罪。一気に「改憲」へ進むことへの疑義が国民に生まれた。同時に呼びかけからわずか4年で、全国にすでに7000会以上できた「9条の会」の活動。日本人の中に9条の思想が脈々と流れていることにメディアもようやく気付き始めたということではないか。

<この後、会場からの意見・質問(筆記)を集め、それらに答える形でパネリストが、今後メディアに何を求め、それをいかに可能にするかについてまとめの発言>

<質問は主に今のメディアの姿勢、特に伊藤氏がいたこともあり「朝日」の「ブレ」への批判的質問が多いようでした>

 それに対しては、伊藤氏は次のように述べていました。

伊藤千尋氏(朝日新聞
批判ごもっともで内部でも批判する声はあります。「朝日」の記者も一般の市民であり、それを変える為に志を持つ記者たちがもっと闘っていく必要がありますね。「世論」の後押しがその闘いの結果を左右するでしょう。
 
 最後に、桂氏によるまとめ的発言で会議は終了しました。

桂敬一氏(日本ジャーナリスト会議
今のメディアに本来の役割(闇夜を照らす先導役)を果たす能力があるかという問題とは別に、現実にはまだ大きな影響力を持つことは事実である以上、我々市民の側がむしろその力を利用する、共同作業として9条を護り発展させる、むしろそうした視点が重要ではないか。


文責:aiti2521
改編:JNICC勝見

参考追記:桂敬一氏が参加した感想を自ら報告
「9条世界会議」参加者の熱気は何を意味するか=桂 敬一


追記 2008.05.09
「9条世界会議」実行委員会が発表した公式成果文書『9条世界会議 第一次レポート』の中で、この自主企画の結果に関する概要が公開されました。以下、転記します。
■ 「憲法9条とメディア」/マスコミ9条の会
 韓国記者協会現会長・元会長を迎えて、日韓のジャーナリストが交流した本シンポジウムには200名が参加、熱気あふれる討議が展開された。韓国側は一様にこの会議全体に感動し感動を韓国に伝えると表明。3日後に「北」の記者たちと会合予定の金会長は、平和の必要性、9条の意義を強調したいと述べた。