国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

コラム:(1)日本の採るべき選択は二者択一なのか(第二部)

以下は、10月下旬の段階まで作成していて途中で書くのを止めた「日本の採るべき選択は二者択一なのか」の第二部です。幻の原稿となり公開されない予定でしたが、法案の提出が決まったので当時の私案として、ファン限定ですがあくまで私案として公開できる流れになりました。あいにく、途中で終わってしまっていますが、実は第一部と同じくらい長大です。繰り返しますが、以下のコラムは2007年10月時点の記事であり、その後の情勢の変化などについては当然ながら加味されておりません。途中で書くのを止めてしまった理由については申し上げられませんが、ご想像にお任せいたします。

2009.02.04 追記
上記のご案内にあるとおり長らくファン限定で公開していた原稿ですが、懸案だったアフガン現地調査が実現し、和平推進に向けた現地の同意もまとめることができたので、満を持して「アフガン・クロスボーダー経済特区開発プロジェクト」(正式名『アフガン東パキスタン西プロジェクト』の原案となった私の私案4部作全てを公開いたします。→(第一部・第二部全編収録PDF



国際社会は2001年から6年間に渡って、この問題に辛抱強く取り組んできました。日本も非軍事面でも多大な貢献を行い、国際社会の一員としてその責任を果たしてきました。しかしそれでも、問題の根本は解決していません。それは、事態解決の方法論が間違っていたからです。もはや、武力に重点を置いた政策では限界であるというほころびがそこかしこで明らかになってきています。このような中で、依然として旧来の軍事的貢献しか考えないというのは、無策であるだけでなく無責任、国際的な責任の放棄に等しい行為です。

ここで必要なのは、真に「国際貢献」と呼べるマインドセットを持つことです。国際(international)とは当然、二国間(inter-nation-al)という概念を包含します。「貢献」の対象国であるアフガンのことを考えない「国際貢献」など、何の実体もありません。先進国がどんなにこぞって、インド洋における日本の活動を評価しても、社交辞令よりもタチの悪い仕組まれた「お礼」など、意味のなさを通り越して「恥」の領域に踏み入っているとすらいえます。

第二部 解決策の提示

V. 提案:日本ならではの平和貢献

では日本ができる真のアフガンへの「貢献」とは何なのでしょうか。真の対テロ戦への国際貢献とは何なのか。それは、武力行使という一端を支援することではなく、その対である平和構築を支援すること、すなわち平和貢献ではないでしょうか。その具体的な構想は、これまでに挙げた課題に答えていけばおのずと形作られます。すなわち、

実際に「国際的に」貢献し、テロとの戦いに貢献し、アフガニスタンのニーズに応え、アフガニスタンの人々のニーズに応えることを、これまで果たしてやってきたのか、やってこなかったのなら何ができるのか、その能力は日本にあるのか、ないならどうすればよいのか

これを、政策決定者である政府が頭を突き合わせて答えを出さなければなりません。しかし、現与党政府が出した答えは、これらの課題にまったく答えません。アフガニスタンという国の現状を、政府はどう考えているのでしょうか。

つい最近、16日の現地報道で、衝撃的なニュースが流れました。アフガニスタンで復興支援活動を統括する責任者である国連の特別代表が、国連事務総長に辞意を表明していることが明らかになったのです。その理由は「祖国のほうが美しいから」ということでした。任期1年をやっと全うした国連の責任者が、このような弱音を吐いてしまうのが、現在のアフガンの状況です。しかし、残されたものは踏ん張り続けなければならなく、国際社会はその結束が乱れるのを非常に懸念しています。国際社会が日本の給油活動の継続を求めたのは、その内容よりも、国際社会の結束を妨げる象徴として、先進国日本が退くことがもたらす影響を恐れたからだといえるのです。

ならば、日本がすることは1つです。実のない形ばかりの、「便利で安上がりで感謝もされてシーレーンも守れるけれども戦争行為には関わらないで済む手間のかからない」貢献などはとっとと止めて、別の方法でアフガン社会、国際社会に真に貢献する策を発動することです。

その策のヒントが、意外にもアフガン人ではなくNATO-ISAF側からもたらされています。Radio Free Europe(RFE)の今月10日の記事によれば、激戦地帯ヘルマンド州のISAF部隊のスポークスマンであるリチャード・イートン中佐(Lt. Colonel Richard Eaton)はこのように述べています。

"It will need a political settlement involving all sides."
「あらゆる紛争当事者を含んだ政治的な解決が必要」

最早、どっちに転んでも武力行使にしかならない二つの選択肢(OEF継続かISAF参加か)に税金を無駄に遣う算段をしている場合ではありません。矮小な国益などよりもはるかに大きなものが懸かっているのです。それは、日本の未来の外交を左右するものです。

今こそ、日本はこれまでアフガニスタンに関する数々のキーパーソンらが述べてきた提言を実行するときなのです。それは、日本が軍人ではなく、軍民でもなく、政治のミッションとして、アフガン問題に正面から、腰を据えて当たるということ。すなわちアフガンの和平実現と治安回復に努めるということです。

これまで、実は課題1~5に対する答えとなるものを順不同で上記に挙げてきました。では、課題5以降の再評価→検証→仕切りなおしのプロセスはどうでしょうか。順を追って考えて見ましょう。

(つづく)