国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

【インドネシア】一般法廷で軍人裁く軍事犯罪法制定へ

イメージ 1

                   (会議が行われたインドネシア国会議事堂前)

ジャカルタ 10日)現地ジャカルタのホテルで無料配布される「じゃかるた新聞」という日本語新聞に、昨日インドネシア国会の下院本会議場で人権法務省政府代表から直接聞いた話のことについて具体的に書かれていました。現地記事なのでウェブでは入手できないので全文転載したいと思います。

ちなみに、昨日参加した同国国会下院委員会でのパネル・ディスカッション(パネラーとして代理出席)の模様は現地の英語紙ジャカルタポストの今朝の朝刊で大々的に取り上げられたそうです(リンク先の写真左から:インドネシアの下院議長のラクソノ議員、ニュージーランド選出のPGA国際本部理事長のロス・ロバートソン議員、国際議員連盟(PGA)インドネシア支部長のサンブアガ下院議員)。

軍事犯罪法を改正へ 一般法廷で軍人裁く

国防省と国会が承認
 国防省と国会はこのほど、刑事犯罪を犯した軍人を一般法廷で裁くことで同意し、三年以内にオランダ植民地時代の遺産である軍事犯罪法(1947年法律第39号)を改正する方針を決めた。
 国会審議中の軍事裁判所法案に絡む関連法改正の大枠を固めたもので、暴力事件など刑事犯罪に関与した軍人も国軍が訴追するのではなく、文民と同様に一般裁判所へ起訴されることになる。軍規違反は現行と同様、軍事裁判所で裁く。
 国会の軍事裁判所法案特別委員会で、ユウォノ・スルダルソノ国防相がこれを承認する書簡に署名。同委のストラダラ・ギンディングス委員(闘争民主党)は

「制定までの三年間は軍人の精神的準備期間」

と述べ、ユウォノ国防相

「軍人も受け入れている。今後は軍事訴訟法改正案の策定が争点になる」

との見方を明らかにした。
 これまでの審議で、国防省、国軍側は文民司法権を委譲することに抵抗し、制定時期を引き延ばす姿勢を示してきた。
 今回もユウォノ国防相は、刑法は刑訴法などの改正が先決との条件を突きつけたが、国会数会派が反発、却下された。
じゃかるた新聞(2007年2月10日号)より

13からの多数の政党から構成されるインドネシア国会では、圧倒的な多数派というものが存在しません。政権与党のゴルカルの政権基盤は圧倒的ですが、それが国会においてもそうかというとそうでもない。しかし日本の野党のように足並みを揃えて与党糾弾ということはしないので、バラバラでもそれぞれが国側に反対する主張を展開すれば、それだけで一大抵抗勢力となります。今回の記事においても、国会の数会派が反発したことにより、国側の主張が退けられています。これぞ、民主的な国会運営ではないでしょうか。

途上国の中で、このような敗北感のようなものを感じるとは思いませんでした。しかも日本では今度の憲法改正で、軍法裁判所の設置を決めており、自衛隊自衛軍化の暁には国際刑事裁判所に管轄権が委譲されることのないよう、国内軍法で裁くための制度を作りあげることに余念がありません。その中で、このような“逆転の発想”ともいえる考え方で、「軍人ではない自衛隊員を民法で裁く」のではなく、「軍人となった自衛軍兵士を軍法で裁く」という、“従来どおり”の普通の国の発想しかできない平和立国・日本のこの発想の貧困さは一体何なのでしょうか。私が現地ジャカルタで感じたこの“敗北感”皆さんに伝わるでしょうか・・。