ところが、国連事務局のドキュメンテーション・サービスの総会決議一覧サイトにも公開されておらず、事務局から発表されたのは、同条約が採択された総会からのプレスリリース(第61回国連総会協議結果に関するプレスリリース(英)のみでした。尚、このプレスリリースの内容にも、ICCに関する記述は見られませんでした。
他に、国連総会の所属機関として今年3月に誕生した国際人権理事会(HRC)サイトのエクストラネット・サービス(要登録)経由での調査も試みましたが、12月14日付けで採択された草案を見つけることはできませんでした。つまり、国連総会決議に関する国連の公式およびセキュア・チャンネルの全てで、14日付けの条約の草案は現時点では公開されていないことが判明しました。
②各国メディア経由での確認 |
国際通信社ではロイター(英:国際)、AFP(仏:国際)、欧米ではウォールストリート・ジャーナル(米)、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(米)、CNN(米)、BBC(英)、ニューズバンク(オランダ)、中東からはアルジャジーラ(カタール)、アルアラビア(UAE)、ラテンアメリカ・カリブ海ではプレスナ・ラティーナ(キューバ)、アジアでは、インターファクス(ロシア)、バンコク・ポスト(タイ)、ストレーツ・タイムズ(シンガポール)、朝鮮日報(韓国)など、各国・各地域から10紙以上の報道を検討し、いずれも「ICC」の記述がないことを確認しました。
③IGO・国際NGO経由での確認 |
この段階ではIGO(政府間機関)では米州機構(OAS)、NGOでは国際赤十字委員会(ICRC)、アムネスティー・インターナショナル(AI)、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、強制失踪と戦うラテンアメリカ連合(FEDEFAM)、国際人権連盟(FIDH)のプレスリリースの内容にも「ICC」の記述がないことを確認しました。
④強制失踪に運動に関わる同志に直接確認 |
そこで、インドネシア失踪家族協会の同志に頼んでみたところ、ホリデー・シーズンなので本人からは連絡を得られなかったのですが、スリランカ人のもう1人の同志からこのたびの条約案採択についての重要な情報を入手しました。
ベルギーの人権法の専門家であるANICC(アジアNGO連合)の代表のアーメッド博士はこう延べ、12月に採択された強制失踪条約は今年6月に国連人権理事会(HRC)で採択されたもの(問題の条約案)とまったく同一であり、総会は下部組織のHRCの勧告を受けて、条約案をそのまま修正なしに採択した事実を教えてくれました。すなわち、これまでに確認したとおり、条約にはICCに関する記述はなく、国連、メディア、NGOの発表を再検討して得た結論がこれにより確定されました。
It was adopted by consensus, exactly as sent by the Human Rights Council following its adoption last June. As you rightly noted, the Convention does not refer to ICC.
条約案は、6月に国際人権理事会で採択されたままの状態で提出され、コンセンサスにより採択された。仰るとおり、条約にはICCに関する記述はない。
条約案は、6月に国際人権理事会で採択されたままの状態で提出され、コンセンサスにより採択された。仰るとおり、条約にはICCに関する記述はない。
結論:12月に成立した「強制失踪条約」には「ICC」に関する記述はなく、同条約は強制失踪の罪についてその捜査・訴追をICCに付託するものではない。また、同条約に記述される「人道に対する罪」は国際刑事裁判所規程(ローマ規程)に定義される犯罪としての「人道に対する罪」と同義ではないことが判明した。日本の報道各社には、「ICC」の記述を条約のどこで発見してどのようにそれを事実として受け止め、報道したのか、説明する責任がある。 |