国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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〔06年上半期〕国際刑事裁判所の発足後の歴史

国際刑事裁判所発足後の発展の歴史 (2006年上半期)

2006年1月

・18日: コンゴ民主共和国(DRC)の案件にて、ICC史上、そして国際刑事裁判史上初めて、犯罪の被害者が予審裁判の審理への参加を許される。
2006年2月

・10日: ICCが全世界103カ国から受け取った、国際犯罪が行われたと訴える1703件に及ぶ訴状について、検察官は回答を書面にて公開。イラクおよびベネズエラにおける犯罪を訴える訴状については、ICCの管轄権外であることを理由に訴追不可と判断。コートジボワールおよびコロンビアの案件については慎重な調査が必要であるという認識を表明し、両国の指導者および犯罪に関わっていると見られる者に明確なメッセージを送る。(イラクからの訴状に関する詳細
2006年3月

・10日~11日: オランダ、ハーグにて判事6名の宣誓就任式が執り行われる。6名の判事らは、第四回締約国会議において、全世界各地域の資格を有する法律家らの中から選ばれた。選出された6名を含めた18名の判事は会議でカナダのキルシュ判事を裁判所所長として再選。さらにガーナのクエニェヒア判事(Judge Akua Kuenyehia)と ボリビアのルネ・ブラットマン判事(Judge Ren?? Blattmann)がそれぞれ副所長として選ばれた。(選出された統括部の面々と選出方法

・12日: 米国政府閣僚として初めて、コンドリーザ・ライス国務長官が冷え込むラテン・アメリカ諸国との関係修復を図るために、政府として反ICC政策の転換を検討するという表明があった。これは重大な情報だと思われるため、UPI通信の報道の全文を以下に翻訳・転載する。

米国、チリ、ボリビア両国への支援凍結を見直しか
【チリ/サンチアゴ 12日 UPI】米国の政府関係者は、国際刑事裁判所ICC)に対する米国市民の免責を拒否したラテンアメリカ諸国について、一旦は凍結した軍事支援を再開する方法を検討している。
 米ニューヨークタイムズ紙によると、チリに渡航中のコンドリーザ・ライス国務長官は記者団に対し、テロや麻薬撲滅の戦いに臨んでいるチリやボリビアなどの国々に対する軍事支援を削減したり停止することは「自分の足元を銃で撃つようなものだ」と述べたという。
 同紙によると、米国議会が施行した法律では、ICCに対する米国市民の免責を拒否する国に対する軍事支援の禁止が定められているが、少なくとも30カ国がこの免責を拒否しており、そのうち12カ国がラテンアメリカおよびカリブ海諸国だという。同法にはブッシュ大統領による軍事支援凍結の撤回を可能にする規定も定められているが、国務省関係者によると、ブッシュ政権の中には凍結撤回の前例を作ることで、他の国からも撤回の要請が相次ぐことを危惧する声があるという。

・14日: 米軍ラテンアメリカ方面軍司令官のクラドック将軍(General B. Craddok,)が米上院軍事委員会での証言のなかで、米国との二国間引渡し拒否協定(BIA)に応じないICC締約国に対する軍事支援を禁止する、2002年ASPA法(米国軍人保護法)に基づいた現政権の政策は「意図しない結果」を招くであろう」と発言。同将軍は、ASPAが生み出す空白により「ますます各国の軍司令官や将校が中国で軍事教育や訓練を受けるようになっている事実は、(我が国に対する)大いなる脅威となる恐れがある」と警告。ヒラリー・クリントン上院議員や、ジョン・マケイン上院議員、ジョン・ワーナー上院議員などの主だった議員らは、この件について重大な懸念があるとし、ASPA法の規定の一部を検討し直すことを要請した。また一部の議員は、現在議会で審議中の緊急時の補完のための法案に、同法の取り消し規定を設けることを提案している。

・16日: トリニダード・トバゴの元大統領兼首相であり、元PGA(地球的規模問題に取組む国際議員連盟)メンバーでもあるロビンソン氏(Mr. A. N. R. Robinson)が、締約国会議事務局により国際犯罪に関する被害者信託基金(VPRS)の役員理事に選出される。同氏は、常設の国際刑事裁判所の設立に長きに渡って貢献し続けてきた最大の功労者といえる人物で、1989年12月の国連総会では、トリニダード・トバゴの首相として、国際刑事裁判所の設立を総会の議題として提案した。その後、ICCの実現のために多方面から支援を続け、ローマ規程発効のために尽力してきた。

・17日~20日: 武装勢力に児童を徴兵し強制的に戦争に参加させた疑いで、ICCトマス・ルバンガ(Thomas Lubanga) 容疑者を逮捕。同容疑者は、ICCの要請による逮捕・引渡しが実現した初めての被告となった。ルバンガ容疑者は、コンゴ民主共和国(DRC)のイトゥーリ地区で暴力行為を繰り広げたとされる武装組織、コンゴ愛国者同盟(UPC)の指導者と見られている。国連コンゴ民主共和国ミッション(MONUC)によると、ルバンガ容疑者の逮捕は2005年3月21日、DRC当局により同国の国内法手続きに従って遅滞なく実行された。
 同容疑者の引渡しを求める国際逮捕状は2006年1月、ICCによって交付された。キンシャサからハーグまでの移送にあたっては、フランス政府が協力した。ICC検察官は今回の逮捕の実現について、「これはDRCにおける最初のケースではあるが、これを最後とはしない」と語った。ICC第一予審法廷のクロード・ジョルダ判事(Presiding Judge Claude Jorda)は、バンガ容疑者が自身の罪状について把握し、諸手続きに慣れ、公正な姿勢で裁判に臨めるようにするには「3カ月の期間が必要」と述べ、ルバンガ被告に対する正式な罪状を説明するのは、次回2006年6月27日の審理の場においてになると説明した。

2006年6月

・1日: ICCの要請により、国際刑事警察機構(ICPO)が初めて、5通の赤・国際手配書(Red Notice)を発行する。手配書にはICC発行の国際逮捕状に書かれた神の抵抗軍(LRA)の司令官ら5名が含まれた。手配されたのは、ジョセフ・コニー(Joseph Kony)、ヴィンセント・オッティ(Vincent Otti)、オコト・オディアンボ(Okot Odhiambo)、ラスカ・ルキーヤ(Raska Lukwiya)、ドミニック・オングウェン(Dominic Ongwen)ら5名。これら5名の逮捕・拘束を求める赤手配書は、全世界184カ国に送達された。(詳細

・14日: 米国務省の主席法律顧問であるジョン・ベリンジャー氏(Mr. John Bellinger)が米ウォールストリート・ジャーナル誌とのインタビュー(英文)で、ICCに対する米国政府の方針の転換を伺わせる発言をする。米国が徐々に、ICCの正当性を認め、その国際正義における重要な役割を認め始めていることを示唆するものだった。同年5月の演説でベリンジャー氏は、ICCに関する不協和音は、ジェノサイドや人道に対する罪との戦いのなかで、これら共通の目的を達成するために必要な我らの力を妨げることになる」と警告を発した。(演説の抜粋部分の和訳