新年早々、とても残念なニュースが飛び込んできました。
批准法案は賛成57・反対17の賛成多数で可決されましたが、政府が法案を議会に提出したときに反対した議員の中にはヨルダンの最大政党であるIslamic Action Front(イスラム行動戦線)のメンバーもいたということです。法案に反対した議員らは、「ICCの設立条約であるローマ規程の履行義務に反する行為である」とする人権保護団体のアムネスティー・インターナショナル(本部:イギリス)やヒューマン・ライツウォッチ(本部:ニューヨーク)の主張に準えて主張したそうです。
しかし一方で賛成派の議員は、「ヨルダンの最大の支援国である米国とこの協定を結ぶことこそがヨルダンの国益である」という、至極現実的な主張で反対派の意見を退けました。賛成派の議員らにとっては米国の支援規模が現行より後退してしまうことに問題があり、米国のASPA法(※1)が定める軍事および経済支援の停止条項に触れることはなんとしても避けたいとの強い思惑があったからです。
また米国のブッシュ大統領が昨年の7月に大統領令により協定批准のために半年間の猶予を与えたことから、ヨルダン側としてはこの期間中に協定批准のために全精力を傾けなければならなかったという事情もありました。結果、米国議会はその努力を認め、同月中にヨルダンに対する33億ドルの追加支援を決定しました。したがって、もはやヨルダンに協定の批准を拒否する手立てはなかったといえます。
ヨルダンは中東アラブ・イスラム諸国の中で唯一のICC加盟国であり、またICCの運営母体である締約国会議の議長国でもあるという、ICCとは切っても切れない縁で結ばれている重要な国です。その国が、「免責を撤廃する」というICCの基本理念を脅かす米国との免責協定を結んでしまうことは、米国の意向に左右されやすい他の加盟国の動向や、まだ加盟に至っていないが加盟を検討している国々にも大きな影響を与えることでしょう。
現在、ICCに加盟しているイスラム国はヨルダン、アフガニスタン、タジキスタンの三国のみで、全世界の人口の1/3を占め、国連加盟国も同率を占めるイスラム国家の代表であるこの三国がすでに米国とのBIAを締結してしまっているという事実は、今後のICCの発展を占ううえでも極めて憂慮すべき事態であるといえるでしょう。気になるのは、この動きにより他の小国がどのように動くかです。
現在、ICCに加盟しているイスラム国はヨルダン、アフガニスタン、タジキスタンの三国のみで、全世界の人口の1/3を占め、国連加盟国も同率を占めるイスラム国家の代表であるこの三国がすでに米国とのBIAを締結してしまっているという事実は、今後のICCの発展を占ううえでも極めて憂慮すべき事態であるといえるでしょう。気になるのは、この動きにより他の小国がどのように動くかです。