国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

【資料】(1)外務省資料(2005.11.30)に関する補足

はじめに

 せっかく許可を頂いて公開した資料ですが、その内容はあまり簡単に理解できる内容ではないと思います。
 そこで、ICCに関する基本的知識とともに、公開資料の内容を項目ごとに紐解いていきたいと思います。

日本の現状について①(外務省公開資料より)

1.ICCの意義 

●国際刑事裁判所(ICC)とは、国際社会にとって最も深刻な罪(集団殺害罪、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略の罪)を犯した個人を国際法に基づき訴追し、処罰するための常設の国際刑事法廷。
   → 国際社会における最も深刻な犯罪の発生を防止し、もって国際の平和と安全を維持する。

● 国際条約(ICC規程)により設置。同規程の締約国は100ヵ国。署名国は139ヵ国。2002
年7月1日に発効し、これまでは本格的な活動開始に向けた準備期間と位置づけられたが、スーダン・ダ
ルフール情勢の安保理からの付託を受け、次第に活動を本格化させつつある。裁判所はオランダのハーグ
に置かれている。(主たる非締約国は、日本以外では米国、ロシア、中国、インド等)。
 (参考)  旧ユーゴ及びルワンダにおける犯罪については、ICC自体が存在していなかった時点で、
国連安保理決議で個別の国際法廷を設置。

ICCが扱う犯罪は次の3つです。

1)人道に対する罪: 平時に行われる国際法(人権法)に対する違反行為
2)戦争犯罪: 戦時に行われる戦時国際法(人道法)に対する違反行為
3)ジェノサイド(集団殺害): 平時・戦時を問わず、特定の民族や集団に危害を加える目的で行われる、ジェノサイド条約に違反する行為

 これらとは別に、ICCが扱うべき犯罪として候補には挙がっていたが、ICCの設立を協議する国連の作業部会で最終的に懸案事項として残されたのが、第四の犯罪である侵略の罪です。この第四の犯罪については、国際法上固定の定義がなく、各国の解釈でその定義が異なってしまうため、ICC設立の協議をする段階では未決となってしまいました。したがって、現時点ではICCが扱う犯罪として規定されていはいるものの、ICCはこの犯罪に対する実質的な管轄権は持っていません。
 この第四の犯罪については、現在もICCの運営母体である締約国会議(解説)の特別作業部会の中で協議が進行中で、2009年の7月の条約改正時にその明確な定義が盛り込まれ、それ以降に実質的にICCが「侵略の罪」をその管轄に置くことになることが見込まれています。

 これらの行為を犯罪として規定しその罰則を定める規程、通称「ローマ規程」(解説)に基づいて、ICCは独立した検察局を通して犯罪の捜査・訴追を行い、裁判所でその審理を行い、判決を下します。

 こうした国際刑事法廷の存在により、国際社会において最も深刻な犯罪とされている上記の3つの犯罪の発生を抑え、国際平和と安全の維持に貢献するだろうと世界に期待されています。日本は、この国際刑事法廷への参加を現在真剣に検討しているのです。