国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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【ダルフール】AP通信がICC検察官の安保理定例報告の内容を報道

ダルフール問題を専門に扱うAP通信のジョン・ヘイルプリン(JOHN HEILPRIN)記者が6日、ニューヨークの国連本部で行われたICCモレノオカンポ検察官による国連安保理定例報告について、前回に引き続き記事を担当しました。定例報告は今回で7回目となります。実は日本では先月14日、超党派議員連盟であるPGA(地球規模問題議連)日本支部がこの報告の発表に合わせて決議を採択しています。(関連記事

以下は、AP通信の記事の抄訳(一部省略)です。



ダルフールは犯罪現場と化している」ICC検察官

原著:JOHN HEILPRIN、AP通信特派員
訳・再編:JNICC勝見
(国連 6日)「スーダン政府のダルフールにおける行動は、地域を犯罪現場("a crime scene")と化してしまっている」国際刑事裁判所ICC)のモレノオカンポ検察官は5日、同地域で恐れられ多くの殺害について責任を問われている民兵組織とスーダン政府の直接的な繋がりを示すとされる今週発表された報告書の内容にこう付け加え、強く批難した。

驚きに包まれる国連の安全保障理事会で、検察官はこう続けた。

「《スーダン政府による》多くの約束や否定にもかかわらず、過去5年に渡り、数百万もの民間人が彼らを守ることを誓約した政府の人間によって標的とされてきた。免責が蔓延している」

本紙が今週始めに入手した報告書の中で、オカンポ検察官は、スーダン西部ダルフール地域において犯された人道に対する罪については、スーダンの全国家的体制("whole state apparatus")での関与が疑われるとした。

報告書では、安保理決議という国際法の要請にもかかわらず、スーダン政府が過去6カ月の間、ICCに対する協力を一切深めておらず、ダルフール地域における人道に対する罪の疑いで起訴された人間が逮捕されていないことが明らかにされている。

スーダン政府はこれらの申し立てを虚偽で悪意に満ちたものであるとし、和平の見込みを阻害するものとして反論した。

「我々は、ナチスドイツがかつて国家主権を用いて自国民を攻撃し、さらに国境を越えて他国の国民を攻撃した事実を知っている。ダルフール全域において5年間に渡りこれほどの規模の犯罪が行われたという証拠が示すのは、スーダンの全国家的な動員体制(※)によりこれが支えられたという事実である」

オカンポ検察官は、スーダンの隣国チャドを拠点として18カ国で100人以上の証人を対象に行った調査の結果が示すこれらの証拠を来月、ICCの本部が置かれるオランダのハーグで発表すると報告した

コスタリカのブルーノ・スタグノ・ウガルテ(Bruno Stago Ugarte)外相(《元ICC締約国会議議長》)は理事会に対し、姿勢を強めるべきだと主張した。

「時間が経過するごとに、死人は増え悪に与する結果を責任として負うことになる。スーダン政府は我々を弄び、人の尊厳を弄び、そしてこの理事会の権威を弄んでいる」

6月の議長国である米国のザルマーイ・カリルザード(Zalmay Khalilzad)大使は「実に憂慮すべき内容の報告("very disturbing report")であり、安保理としての正式な対応を決定しなければならない」とした。また国連のバン・キムン事務総長の側近が読み上げた声明によれば、事務総長もこの報告に対し「深い憂慮」("deeply concerned")を示したという。

安保理では今週中にもスーダンへ視察団を派遣し、人道的危機の状況把握に努めることになっている。また2005年に南北間で結ばれた脆弱な和平協定についても、安保理としての関与を強める意向でいる。

スーダン政府のアブダルマフード・アブダルハレーム・モハメド(Abdalmahmood Abdalhaleem Mohamed)大使は、訴追により和平プロセスが阻害されるとしてオカンポ検察官を批難した。

「ハーグには我が国の人間は何人たりとも差し出さない。オカンポは和平プロセスを破壊しようとしており、我々としてはこの男がスーダンにおける和平プロセスに及ぼしている影響について責任を問われることを強く求める」
2008年6月6日付け、AP通信記事より

(※)モレノオカンポ検察官が実際に読み上げたステートメント(下記リンク参照)によると、この「全国家的な動員体制」("mobilization of the entire Sudanese state apparatus")とは具体的に以下を示すそうです。まさに「全国家的体制」といえます。
 ○軍事、保安、情報部門間の連携
 ○民兵組織ジャンジャウィードの軍事統合
 ○政府全省庁による参画
 ○外交・広報官僚の協力
 ○司法の掌握