(上)基調講演を行うPGA国際本部のダビッド・ドナ・カッタン局長
(下)ミャンマー問題に関して強く訴えたミャンマー法律家協会のアウング・トゥー事務局長(右)
(下)ミャンマー問題に関して強く訴えたミャンマー法律家協会のアウング・トゥー事務局長(右)
第2セッション:スーダンのICC不協力問題に対する専門家の見方
PGA国際本部国際法・人権プログラムのダビッド・ドナ・カッタン(David Donat Cattin)局長による基調講演では、スーダン・ダルフール問題を「過去」「現在」「未来」の三視点から捉えた形で話が進められました。「過去」においては、まずスーダン事態を国際刑事裁判所ICCに初めて付託した安保理決議1593号の歴史的な重要性とこの決議を履行しないスーダン政府の問題について言及。決議付託後の第一回のICC検察官定例報告で、安保理においてスーダン政府の不履行を批難する姿勢がとられないことが問題だったという、現在の問題に繋がる経緯について解説しました。
「現在」については、ICCによる捜査の最新状況と、決議1593号に対するスーダン政府の不履行の現状、決議採択3周年を記念して2008年3月31日付でEU議長府(スロヴェニア)により発せられたスーダン政府に対する非難声明(英語)など国際社会の現在の反応に触れ、国際社会の潮流としてスーダン政府に対する批難と制裁を求める声が強まっている現状を解説しました。
「未来」においては、今年6月(5日)に予定されている、ICC検察官による第7回安保理定例報告において、検察官がいままでにない強い語調で批難と制裁を求める要請を行う予定であること、同月21~22日には、欧州理事会においてこの報告を踏まえた対応措置が検討されていること、そしてその中で日本がとりうる行動の選択肢を挙げました。とくに、米国がすでに単独で実施しているスーダン政府に対する制裁措置について、日本がこれに連携して制裁レジームに参画すること可能であることを示唆しました。また、こうした二国間のみの対応でなく、多国間・地域間など様々なネットワークを駆使してスーダン政府の国際的立場を弱めるべきだと主張しました。
専門家による鋭い指摘に議員の面々は質問を考える間を持ちませんでした。すると、唯一NGOとして参加を許されたミャンマー法律家協会の関係者が、現状における国際社会の対応を批判し、ミャンマーの問題においても同様の問題が存在することを指摘しました。その上で、ミャンマーの市民社会では、ミャンマー情勢をICCに付託するための活動が進められていることを明らかにし、会議の参加者に理解と協力を求めました。この表明に対し、スピーカーのカッタン局長は、ダルフール問題とチベット問題に共通しているのは、国連安保理における中国の存在であると指摘。ダルフール問題の協議においても中国がスーダン政府に対する制裁措置の発動に難色を示していることが問題視されており、ミャンマー問題においても同様の問題があることを示唆しました。
(了)