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【外務省】ウェリントン会議に関する概要と評価

クラスター弾に関するウェリントン会議 概要と評価

平成20年2月25日
外務省・防衛省

 2月18日~22日、ニュージーランド政府の主催により、オスロ・プロセスの一環としてクラスター弾に関する国際会議(「ウェリントン会議」)が開催されたところ、概要及び評価は以下のとおり。

1.	参加国・団体
 世界各地より103か国、10以上の国際機関及び70以上のNGOが参加。我が国からは、外務省平野通常兵器室長を代表団長として、防衛省担当官他が参加した。米、中、露等は不参加。

2.	評価
(1)今次会議においては、新たな国際約束により禁止されるクラスター弾の定義、締約国と非締約国との間の共同作戦等における相互運用性への影響等について十分な議論が行われた。
(2)会議の最終日(22日)に、新たな国際約束の交渉を5月のダブリン会議において完結するとの目標を確認するウェリントン宣言(仮訳別添)が発出され、我が国を含む多数の国(22日時点で82か国)が支持を表明したことを評価(なお、同宣言への参加は5月のダブリン会議まで可能であり、今後更に参加国数が増えることが予想される。)。

3.	議論の概要
 クラスター弾に関する国際約束の内容について、議長国ニュージーランドより配布されたテキスト(ウェリントン・テキスト。昨年12月のウィーン会議で配布されたテキストに修正を加えたもの)を基に議論が行われた。さらに、今次会議において各国より提出された提案はウェリントン宣言に別添された一覧(compendium)としてまとめられ、次回のダブリン会議においてウェリントン・テキストと併せて議論されることとなった。

(1)	将来の国際約束の主要な論点に関する議論のポイントは以下のとおり。
(イ)	新たな国際約束により禁止されるクラスター弾の定義については、被害国やNGOを中心にあらゆる種類のクラスター弾を即時に禁止すべきとの主張がなされた一方で、欧州主要国(英、仏、独等)や我が国等は、信頼性・正確性の高いクラスター弾は規制の例外とすべきであり、一定の移行期間を設けるべきとの発言を行った。
(ロ)締約国と非締約国との間の相互運用性の問題については、欧州主要国や我が国等が、国際的な平和活動等における共同作戦への影響を回避すべきとの立場から発言を行ったのに対し、オスロ・プロセスの中核諸国からは、国際約束の内容を薄めることなく実際的に対処すべきとの主張が行われた。
(2)	不発弾除去に関する国際的な協力の必要性については、各国の意見が一致した。他方で、条約発効前にクラスター弾を使用した国の責任については、国際約束の普遍性を確保する立場から言及すべきではないとの発言も見られた。また、犠牲者支援については、犠牲者本人に加えて家族やコミュニティへの支援が必要であること等について指摘がなされた。
(3)	その他、国際協力、国際約束の透明性確保のための措置、遵守促進に係る手続、紛争の解決手段等について議論が行われた。

4.	我が国の発言
(1)我が国は、ウェリントン・テキストに対する具体的コメントとして、要旨以下のコメントを行った。
(イ)	第1条(一般的義務及び適用範囲):各国が懸念を表明している相互運用性を確保しつつ、新たな国際約束の実効性を確保するとの観点から、ウェリントン・テキスト第1条1(c)で禁止される「援助、奨励又は勧誘」の対象を「開発、生産又は取得」に限定すること、各国が正当な安全保障上の理由からクラスター弾保有していることにかんがみ、適当な移行期間を設けること等が必要。
(ロ)	第2条(定義):主要な生産国及び保有国の参加を得て実効性を高めることが重要との観点から、新たな国際約束により禁止されるクラスター弾の定義として、子弾数が10個以下のクラスター弾、信頼性の高いクラスター弾(自己破壊機能、自己無能力化機能若しくは自己不活性化機能が付与されたクラスター弾又は不発弾率が1%以下のもの)又は正確性の高いクラスター弾(誘導機能その他によりあらかじめ定められた範囲でのみ有効なもの)については、定義から除外する。

(2)我が国として、ウェリントン宣言への参加を表明するとともに、以下の立場を表明した。
(イ)我が国は、クラスター弾の人道上の懸念を十分に認識しており、建設的な立場から今回のウェリントン会議に参加した。
(ロ)ダブリン会議において、各国の立場を尊重した透明性のある議論が行われることを期待するとともに、宣言に別添された各国の提案もダブリン会議での交渉の基礎となることを求める。
(ハ)CCW(特定通常兵器使用禁止制限条約)の枠組みで議論が行われていることは喜ばしい。
(ニ)人道面と安全保障面のバランス、また、オープンで透明性のある建設的な議論が重要である。
(了)
外務省「クラスター爆弾ウェリントン会議に関する報告会」提出資料