国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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【日報】(中編)ウェリントン会議に関する報告会への参加報告

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スライドを交えて報告を行うJCBLの目加田運営委員(画像悪くてすみません…)


ウェリントン会議に関する報告会について(中編)

国会代表団の報告に続き、NGO地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)の目加田運営委員より、委員が参加したウェリントン会議について、スライドを交えて報告が行われました。

目加田委員はまず、スライド・プレゼンでクラスター爆弾についての簡単な説明を行い、その問題点からオスロ・プロセス誕生の経緯までを話しました。この中で、委員はクラスター爆弾の被害が途上国における低年齢層に集中していることを指摘、とくに15歳未満の子どもがその最大の被害者であることを訴えました。

このクラスター爆弾の禁止を合意するために、ノルウェー政府を中心にいわゆる「オスロ・プロセス」が開始され、2007年2月、クラスター爆弾の使用・生産・・備蓄・委譲の禁止、除去の義務と、被害者支援のための国際的枠組み作りを提唱する「オスロ宣言」が採択されました。この「オスロ宣言」には、イギリスも含む46カ国が署名しましたが、日本は署名を留保しました。

オスロ会議後、「オスロ・プロセス」は継続され、2007年5月にはペルーのリマで、2007年12月には日本の議員代表団も参加した議員間フォーラムに合わせてオーストリアウィーンで、そして2008年2月、直近の会議がニュージーランドウェリントンで開かれました。この中で、新たに「ウェリントン宣言」が採択され、これにこれまでで最大の82カ国が署名し、日本も初めて署名に加わりました。

103カ国が参加した本会議では、条約案全体について各国の意見表明がなされ、ウェリントン宣言への署名が検討・合意され、実行に移されました。本会議での主要な論点は次のとおりでした。

ウェリントン会議の論点(NGOの視点)

(1)移行期間(transition period)
(2)相互運用性(interoperability)
(3)定義(definition)

それぞれの項目について日本側がどう対応したかというと、NGO側の視点では以下のとおりでした。

(1)移行期間については、条約発効後も「一定の期間」はクラスター爆弾の使用を認めるよう求めた。期間については不明。
(2)相互運用性については、条約案に対する代替案を提出。日本、カナダ、ドイツ、オーストラリアなどの国々の懸念は、次のことから成り立っていた。
 a. 締約国になった後に非締約国との共同作戦に参加した結果、締約国の国民が刑事処罰の対象となる可能性がある。
 b. 同盟関係への影響や共同作戦遂行能力等の問題が生じる可能性
(3)定義については、旧式以外の、自滅装置付きタイプや、不発弾率の低いタイプ、目標を識別するタイプは「人道的被害が少ない」と例外対象化を求めた。日本、フランス、ドイツ、スイスがこの案を推進し、ノルウェー、アフリカ、中南米、南太平洋諸国は、例外を設けない議長案を支持した。

ウェリントン会議の結論(NGOの視点)

これらの協議の結論としてウェリントン宣言が採択され、日本を含む82カ国が宣言に署名しました。JCBLによれば、署名しなかったのが確認できているのはブラジルとエストニアの2カ国でその他は不明だそうです。宣言にはCompendium(大要)として各国から提出された全ての修正案が添付されており、日本を含む15カ国(英国、フランス、ドイツ等)は、ウェリントン宣言と条約案を同等に扱うよう要請したそうです。この宣言に次回のダブリン会議までに署名すれば、ダブリン会議に正式参加が可能となります。このダブリンの最終会議において2/3の賛同が得られて初めて、条約案が採択される運びとなります。

ウェリントン宣言では、議長案がそのまま次回ダブリン会議での交渉のたたき台となることが決定しました。ただし、日本、ドイツ、英国、フランス、カナダ等のいわゆる「like-minded countries」(直訳:似たような考えを持っている国々)は、議長案にこれまで同グループが提出した修正案が反映されていないことを問題視し、条約案の草案プロセスが「open, transparent and inclusive(開かれた、透明性のある、包括的な)ものとなることを求めたそうです。

(「後編」に続く)