会議前の会場内の様子
国会のキーパーソンと政府代表がICC加盟へ向けて結束
(ジャカルタ 9日)地球規模問題に取り組む国際議員連盟(Parliamentarians for Global Action:PGA)の主催で『国際刑事裁判所の普遍性を高める為のキャンペーン~インドネシアにおける国際刑事裁判所規程(ローマ規程)への加入と施行に関するパネル・ディスカッション~』が開かれた。発足したばかりのPGAインドネシア支部によるもので、冒頭挨拶をTheo L. Sambuaga下院議員とH.R. Agung Laksono下院議長というインドネシア国会の重鎮が務め、各国の国会議員、政府高官、NGO、学者など約80名が集まった。
●基調演説
ニューヨークのPGA国際本部からは、PGA国際委員会会長を務めるRoss Robertson議員(ニュージーランド)と同本部プログラム局長のDavid Donat Cattin氏(イタリア)がパネラーとして出席し、Robertson会長は基調演説も行った。
この中でRobertson会長は、
「市民を残虐行為や暴力、武力紛争から保護することは、国民によって選ばれた国会議員として当然の義務であり、法治国家として新たな国際刑事法体系を構築する国際刑事裁判所(ICC)に加盟することで、国家は多くのことが得られるが失うものはなにもない」
と述べ、世界で3番目の規模を誇る民主主義国家でありまたイスラム国家でもあるインドネシアがICCに加わることで、アジア太平洋地域におけるICCの普遍性が大幅に高まるであろうと期待を寄せた。●パネル・ディスカッション
パネルディスカッションに移ると、各界代表によりまずステートメントが読み上げられ、その後会議の参加者全てを含んだオープン・ディスカッションに移った。会議の開始が遅れた関係で2つのセッションを1つにまとめたため、総勢7名のパネラーが連続でステートメントを読み上げることとなった。最初にステートメントを読み上げたのは外務大臣のHasan Wirayudha博士だった。
「 国会及び各委員会の各キーパーソンがステイクホルダーとなってリーダーシップとオーナーシップを発揮することで、国家人権計画に沿った2008年加盟の目的が達せられるであろう」
と述べた。また大臣はICCの発足と発展は法治の概念のグローバル化と国際化の象徴となる画期的な出来事であり、インドネシアの外交政策はこの動きに倣って国内外における民主主義と人権保護の推進に当たることであると強調した。大臣はロシアやインド、アメリカ、中国がまだICCに加盟していないことを挙げ、より多くの国の参加が望まれ、そこで締約国の役割が非常に重要視されると指摘した。
次にステートメントを読み上げたのは、法務人権大臣の代理で出席した法務人権局長のHarkristuti Harkrisnowo教授で、Wirayudha外務大臣の考えに同調し、法務人権省としてICCの履行に向けた行政側の準備を進めることを約束した。
ただし、Harkrisnowo局長はICCの最も基本的な原則である「不遡及の原則」を正しく理解できていないらしく、国内では臨時法廷などで「遡及可能の原則」が適用されていることから、ICCへの加盟が国内司法上阻まれることがないことに言及した。インドネシアの政府高官がICCのことを正しく理解できていないことが露見された瞬間だった。
一方、次にステートメントを読み上げた元司法長官のMarzuki Darusman議員は、ローマ規程における実体法条項の自動発効性を指摘し、ローマ規程そのものが「土地の法」(law of the land)になるだろうと展望を述べた。またASEAN第二の加盟国となるため、インドネシア国会、特に法務委員会の総力を挙げて手続き法に関する法整備に取り組むことを約束した。
二度目の演説を行ったPGA国際本部国際委員会のRobertson会長は、
「国際社会においては良いガバナンス(good governance)、透明性(transparency)、説明責任(accountability)が重要であり、これらの条件がそろって初めて国際法治が実現する」
と述べた。(中編に続く)