国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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旧ユーゴ:ICTYで元セルビア兵が減刑による有罪判決

旧ユーゴ国際戦犯法廷が司法取引により被告を減刑

17日の国連ニュースが伝えたところによると、旧ユーゴスラビアにおける犯罪を裁くICTY(旧ユーゴ特別戦犯法廷)で、検察側との司法取引に応じた元セルビア軍兵士の被告がレイプ及び拷問等の容疑を認め、有罪を主張したそうです。この元兵士は、90年代のバルカン紛争においてボスニアムスリムの成人女性および未成年者に対するレイプと拷問の罪で起訴されていました。

被告が有罪を主張したことを受け、ICTYは同被告に人道に対する罪に関する7つの訴因により有罪判決を下し、強姦及び拷問に関するその他の7つの訴因については、検察側との司法取引に応じて棄却しました。検察側は被告に対し10~15年の禁固刑を求刑しましたが、弁護側は7~10年に減刑するよう求めていました。

被告のZelenovic氏は、1992年の夏の間、60人からの女子供及び老人を近くの村から逮捕監禁したのち、監禁していた15歳の少女を幾度となくレイプ及び拷問した罪のほか、複数の成人女性及び未成年者を集団でレイプ及び拷問した罪に問われていました。

(国連ニュースセンター、2007年1月17日の記事:
『At UN war crimes tribunal, Bosnian Serb soldier pleads guilty to rape and torture』より)

ICTYは政治上の理由で遅くとも2010年まで(要求は2008年)に閉廷しなければならない為、司法取引を採り入れてまで裁判を迅速に処理しようとすることには一定の理解を示せます。しかし、上記の罪状を知ってしまうと・・これは「司法取引」をしてもいい内容の罪なのか、甚だ疑問に思えます。この被告は弁護側と検察側の司法取引により、「有罪を主張すれば減刑される」という条件のまま、有罪を主張したのでしょうが、この被告は1年の間に何度も、そして同じ人間に対して幾度となく犯罪を繰り返しています。このような人間が、求刑どおりに7~10年の刑期で社会に復帰できて、それでよいものなのでしょうか?

私は罰則としての死刑を禁止するICCを支持する人間ですが、死刑には反対していません。死に値する罪というのは、存在すると思うからです。この被告についても、私は終身刑ならまだしも、数年の禁固刑では全く納得がいきません。レイプという重大な犯罪に関する罰則の程度の慣例が、世界全般的にゆるすぎると思うのは私だけでしょうか。各国において、レイプを凶悪犯罪として終身刑に値する罪と規定すれば、こうした国際法廷の中でも慣例を生かしてレイプに対する罰則を強化できるのではないでしょうか。今回のICTYの判決には強い憤りを覚えるとともに、ICCにおいては同様の判決(司法取引)が行われることのないよう願いたいものと強く思いました。またそのようなことのないよう、ICB(国際刑事弁護士会)などを通じて監視の目を強めていきたいと改めて感じました。