国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

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【速報】政府、初年度ICC予算に7.2億円を確保(2006.12.24)

政府、国際刑事裁判所負担金の初年度予算に7.2億円を確保

外務省が発表した24日付けの資料によると、日本政府は平成19年度(2007年度)の国際刑事裁判所(ICC)分担金予算として、総額7.2億円を確保した模様です。

この資料『平成19年度予算(PDF)』によると、外務省は以下の一覧に示されるように、「グローバルな課題への対応」と題した予算枠(総額2,042.4億)の中で、「法の支配の強化」の項目として「国際刑事裁判所分担金」を新設。その初年度予算として7.2億円が確保されたとしています。

「グローバルな課題への対応」の主要支出項目(総額:2,042.4 億)
実は、ICC分担金予算として確保された7.2億円というこの金額は、外務省が今年8月に要求した総額19.8億円の推定予算(当時の各社報道)の40%にも満ちません。この19.8億円ですら、外務省が試算した推定負担総額(約30億円)の半分だったのです。つまり、実際に日本に求められるであろうと試算された30億のうち、約20%がやっと確保されたことになります。

ICCについて初めて実質的な資金運用が可能になったとはいえ、これは初年度において、日本がICCに積極的に関わることが難しくなることを実質的に示しているといえます。しかし、ここに辿りつくまでの道のりは決して平坦のものでなく、外務省が財務省を相手にいかに熾烈な交渉を行ってきたかは、以下の一連の報道からも伺えます。「法の支配の強化」という新たな支出項目に対する予算割当ての理解を得るのは、相当骨の折れる作業だったものと思われます。

外務省と財務省の予算交渉の軌跡(各社報道)
ICCへの取り組みで変化する日本外交

外務省の総予算からすれば微々たる数字ですが、7.2億というICCのための予算が、初めて政府によって公式に、適正な手続きを経て用意されたことは非常に喜ばしいことです。今後はこの予算確保を念頭に、国会で政府答弁が行われることになりますので、国会の場では、ICCを支持する議員らによって政府答弁がサポートされるような展開が望まれることになります。

政府全体として歳出削減が求められる一方で、日々変わる国際情勢に対応できる外交力を高めるための予算増加を必要とする日本。「法の支配の強化」という題目を抱えながらも、経済大国日本がそのために拠出できる金額はわずかです。しかし、わずかではありながらも、今回の負担は、日本がこれまでは国連加盟国の義務として負担してきた国連設置の旧ユーゴ国際刑事裁判所ルワンダ国際戦犯法廷とは性格が異なります。ICCは国連から独立した初の常設国際司法機関であり、日本はその国連を離れた枠組みのICCに対して、独自的かつ主体的に分担金の拠出を決めたのです。

日本のICCへの取り組みは、日本の国際司法に対する関わり方を変えるだけでなく、日本の外交姿勢を「受動的でリアクティブ(反応型)」なものから、「主体的でプロアクティブ(能動型)」なものへと変化させるきっかけを作ったといえるのではないでしょうか。今後も、ICCへの取り組みが、日本の外交にこのような良い効果をもたらし続けることを期待したいと思います。