国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

【資料】日本の現状について③④─外務省(2005.11.30)

国際刑事裁判所(ICC)規程締結に向けた作業の現状(平成17年12月)

3.締結に向けての国内法整備
● 刑事実体法のほか、ICCの行う捜査・裁判・刑の執行等への協力に関する手続法など、刑事法全般にわたる検討が必要。各国の実行も調査することが必要。
●現在、これまでの調査や検討を踏まえ、我が国がICC規程を締結する場合の国内法整備の形式及び内容につき関係省庁で緊密に協議しつつ具体的な検討を進めている。
(参考)平成14年6月に有事法制整備の一環としてジュネーヴ諸条約上の義務を担保するとの観点から、戦争犯罪に関連した国内法の整備も行われたことは、ICC規程締結の観点からも重要な前進。

実体法(対象犯罪の処罰)に関する主な検討事項 
◇ICC規程上の犯罪の定義に該当する行為であって我が国の現行法では処罰されないものがあるか(「補完性の原則」との関係)。
例えば、ICC規程においては、集団殺害の実行を直接かつ公然と煽動する行為を処罰の対象としているが、我が国の現行法上、殺人等の一般犯罪について、実行行為を伴わない煽動行為のみで処罰することはできないため、この点につき検討する必要がある。
◇公的地位の無関係
ICC規程においては、いかなる者であっても公的地位を理由として処罰から免れることはないと規定されているため、国会議員の免責特権によって保障される議院での発言・表決等について検討する必要がある。 
◇時効の不適用
  
手続法(ICCへの協力)に関する主な検討事項 
◇国際機関に対する協力 
現行の「国際捜査共助等に関する法律」及び「逃亡犯罪人引渡法」は、我が国の他の国に対する協力について定めたものであり、ICCのような国際機関に対する協力を定めたものではないことから整備が必要である。
◇協力が義務づけられていること
現行「国際捜査共助等に関する法律」及び「逃亡犯罪人引渡法」の枠組みは、国対国の対等な関係に基づく協力を前提としているところ、ICCはこれと異なり、ICCからの協力の要請に対しては、原則として協力を拒否することはできず、締約国は協力のための国内手続を確保することが義務付けられている。これに対応する国内法の整備が必要である。

4.予算の問題  
● 我が国がICC規程を締結すれば加盟国として相応の予算の分担の義務(国連の分担率がベース)を負うことになる。
●我が国の分担率、分担金額の上限(シーリング)の設定等については今後協議していく必要があるが、我が国が負担すべき額は数十億円程度にはなると想定される。
●厳しい財政事情の中で、我が国のICC規程の締結に伴う分担金の負担につき、国民・国会・政府部内において可能な限り広範な理解を得つつ、政府全体で取り組んでいく必要あり。

(参考) 2006年度の予算規模は約8040万ユーロ。加盟国の分担率は、国連の分担金拠出率に国連とICC規程締約国との構成の相違を考慮して変更を加えた分担率が採用されている。仮に、2006年度予算について、日本がICCに加盟していた場合の試算をすると、日本の分担金は約2250万ユーロ(約30億円)。なお、2006年度の主要国の分担金は下記のとおり。

                   独 約1440万ユーロ
                   英 約1020万ユーロ
                   仏 約1010万ユーロ
                   伊 約 810万ユーロ  等
                                                     

   (了)