二年前に横浜で世界連邦の面々に対して内々で行った講演の内容(トラックバック先参照)をベースに、「人間の安全保障省」という政府機関の創設に向けたものへと大幅に改編したものでした。
講演時間は90分+α。質疑応答を入れて3時間のセッションでした。
今回の講演会は個人のお宅で行われたため『平和省プロジェクトJUMP』のメンバーに限定してごく少人数で行われました。ただし講演の資料(スライド)などは一般公開する予定でいます。講演のビデオ(動画)は、メンバー限定で公開予定です。
所感
勉強会では3度に渡る質疑応答のなかで非常に活発に議論が行われ、「平和省プロジェクト」との相違点や類似点、それぞれが抱える課題の差別化など、論点整理が行われました。
たとえば、「平和省」は、国外の紛争対処や防止などのみを目的としたものではなく、国内外の紛争・暴力の予防に焦点を置いた業務を行う政府機関であり、その対象には家庭内暴力などのミクロのスケールでの暴力も含まれること。
これに対して「人間の安全保障省」は、国際規範に基づく実現目標を掲げ、そのためには「保護する責任」というもう一つの国際規範を実践するための紛争の予防・対応・復興のメカニズムの構築が必要であるというマクロなスケールで考えること。
しかし、双方とも、武力を介さないで紛争の根本を正す「積極的平和」をいかにして実践するかについて必要な機構を政府が有するべきだという考え方に端を発している点は同じなので、その根底にある理念は共有するということがよく理解でき、相互に理解が深まった、相互に勉強できたよい勉強会だったのではないかと思いました。
講演概要
日本政府は外交の基本方針として「人間の安全保障」(Human Security)の推進を掲げる。これは、安全保障の課題として人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的に捉え、これらに対する取り組みを強化しようとする概念で、1994年に国連が初めて打ち出したものである。
日本政府は「人間の安全保障」を日本の価値観外交の中核概念に据え、国際平和協力を行ってきたが、国連での基金の設立や基金への献金、少数の人員でなされる草の根人道支援など、その実態は“小切手外交”に限りなく近い。グローバル・ガバナンス実現の試金石ともいえる人間の安全保障の確立のためには、まず政府の中で横断的に各省庁の機能が連携することを可能にする「人間の安全保障省」(Ministry of Human Security:MHS)の創設が不可欠である、という前提で話した。
本講では、「人間の安全保障省」の創設に必要な諸課題を並べ、これらの課題をどうクリアしてゆくか、そしてこの発想が「平和省」創設運動にも役立つかを、元参議院議員犬塚直史著『脱主権国家への挑戦~支えあう平和を求めて~』をテキストに、ひとつずつ読み解いてゆくことを目的とした。ただし、その趣旨は講演前は非公開とし、事前予告のないまま与えられた課題についてブレインストーミングすることに重点を置いた。
主催者側の報告(概要)
配付資料(PDF、22MB)