国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

【資料】(後編)犬塚議員の参議院本会議代表質問書

国際刑事裁判所・保護する責任と人間の安全保障

さて人間の安全保障という言葉は、1994年に国連開発計画が使い出して有名になりましたが一般化されたのは最近です。しかも、この言葉はICCのためのローマ規程起草時にも想起されており、規程の採択と並行して人間の安全保障の概念も発展および一般化したともいえます。

その一方、2005年の国連サミットで「保護する責任」という概念の枠組みが国際的に認められました。国家主権には国民を保護する責任が伴うこと、そうした責任が果たされない場合、例えば1994年のルワンダにおいては100日間で80万人が虐殺されたといわれていますが、ある国家が当該国民を保護する能力も意志もない場合、国際社会がこれに代わって被害者を保護することが謳われています。

国際刑事裁判所及び保護する責任という概念は、共に人間の安全保障政策の重要な要素を成すものであり、今後我国においても政策の基礎に据える理念として研究すべきと考えますが、外務大臣のご認識を伺います。

ICC特権免除協定(APIC)締結について

ICC国際刑事裁判所の制度を実効的かつ普遍的なものにするために重要な役割をはたすのに、ICC特権免除協定APICと呼ばれる補完協定があります。

この協定は、ICCの裁判官、検察官、書記などに対して「外交使節長と同等の特権および免除を享受する権利」を保証するものです。ICCは国連の機関ではないため、1946年に採択された国連特権免除条約と同等の法人格を保証するための協定です。

わが国は、この協定について、ローマ規程と同じ1998年7月17日に採択された最終合意書に於いてその草案の作成に賛成しています。この協定に対する我国の今後の取組みを外務大臣法務大臣に伺います。

被害者信託基金への貢献

さてICCには、これまでの国際司法機関にない特長として、被害者信託基金が設けられています。現在、基金の規模は2,370,000ユーロ(約3億7,000万円)となっております。

この基金の目的は「紛争などによって破壊された日常を取り戻すための救済と補償」にあります。当然支援すべきと考えますが、この機構に対する我国の姿勢を外務大臣に伺います。

普遍的管轄権の確立

ご存知のようにICCのためのローマ規程を米国は締結していません。しかし、その前身となるICTR、ICTYの設立に当って米国はたいへん大きな貢献をした他、ローマ規程採択会議でも、補完性の原則に関する厳格な適用、修正手続き規定、犯罪人引渡しおよび協力に関する均衡のとれた手続き規定などの分野でその発展に大きな貢献をしてきました。

米国のICC加盟はまさに機能する国際刑事裁判所にとって不可欠なものといえます。我国は同盟国として米国のICC加盟に今後どのような働きかけを行って行くのか、外務大臣のご決意をお聞かせ下さい。

さて昨年12月に2日間に渡って憲政記念館で開催された、ICCと人間の安全保障のための国際会議では、我国の超党派国会議員の他、多くの関係各位のご協力により世界59ヶ国、142名の国会議員が日本を訪れ、フィリップキルシュICC所長も含め、参加者総数が312名という大規模な国際会議となりました。

スーダンアフガニスタンイラクなどの議長を含む多くの紛争当事国も参加し、ICCと人間の安全保障に対する各国の希望と、日本の活躍に対する大きな期待を感じさせました。

ICC国際刑事裁判所設立は、力の支配から法の支配へと向かう国際社会の歴史的な前進であり、今回の日本の加盟には各国の期待が集まっています。

今週はICJ国際司法裁判所のヒギンズ所長が来日され、一昨日は国連大学において「法の支配と市民社会」という講演をおこないました。ICJは国家をその司法の対象とする国連機関であります。原爆の使用を原則的に違法とする勧告的意見を明らかにするなど数々の貢献をしてきました。

一方ICCは個人をその司法の対象とし、条約によって2002年に設立された国際機関であります。2009年の規程見直し会議においては原爆を含む大量破壊兵器の使用、侵略、テロなどをローマ規程の罪刑に含めることも検討されるでしょう。日本が今後締約国としてこうした場において大きな活躍を続けることを確信するものであります。

ICCに代表される人間の安全保障にかける国際社会の努力、そして日本の貢献は決してこれが初めてのものではなく、また最後のものでもないことを強調して私の質問を終わります。

以上