国際刑事裁判所(ICC)と日本 [はてな版]

人間の安全保障の発展に貢献する日本と世界の道筋と行く末を見つめます。

〔07年序盤〕国際刑事裁判所の発足後の歴史(2007.06.12更新)

国際刑事裁判所ICC)の世界の現在 (2007年序盤)

1月

・16日: 日本政府が、次期通常国会においてICC規程に批准するための条約承認案と、外国人容疑者の身柄引き渡し規定などが盛り込まれたICC協力法案を提出し、その成立を待って「10月にも加盟する」という意向を示した。批准日程が決定したことにより、加入準備のための舞台は国会に移る。

・24日: ICC書記局がコンゴ民主共和国のトマ・ルバンガ被疑者に関して昨年行われた公開審問について、その判断結果を公開する公聴会が1月29日(火)午後3時より開かれる旨が発表される。書記局は事前リリースで、審問を行った第一予審法廷が下す可能性のある4通りの判断について説明した。(詳細

・29日: ICCの第一予審法廷(PTC I)が、コンゴ民主共和国武装勢力司令官のトマ・ルバンガ被疑者が 15歳未満の児童を戦闘兵として徴用した容疑が固まったとして、公判を開始することを発表した。ICC初の裁判案件となり公判は年内開始の見込み(AFP報道)。

・29日: 2月1日までの二日間、ニューヨークの国連本部にて、第五回締約国会議(ASP)の再開協議(侵略の罪に関する特別作業部会:SWGCA)が行われる。ローマ規程に追加する犯罪要素としての侵略の罪の定義、および2009年に開催予定のローマ規程修正会議での同定義の扱いについて集中審議が行われる予定。
2月

・1日: ニューヨークで開かれている第五回締約国会議(ASP)の再開協議において、被害者信託基金の理事の選出投票が行われる。アジア枠の欠員を埋める候補者が1人しかいなかった為、ASPはコンセンサスによりモンゴルのBulgaa Altangerel元国連全権大使を選出。2006年12月1日から3年の任期を務めることが決まった(詳細)。
さらに、昨年12月に辞任したアイルランドのクラーク(Maureen Harding CLARK)判事の後任選出選挙を次期(第六回)締約国会議で実施することが決定され、判事推薦期間が2007年6月1日~8月24日の間に改められた。これにより、7月の批准書寄託を目指す日本にも判事推薦の機会が与えられる可能性が浮上した。推薦時期中に締約国資格を持たない日本の場合、ローマ規程第36条④bの定めにより他の締約国の推薦を得られれば判事推薦を行うことができる可能性がある。

・9日: インドネシアジャカルタで、国際刑事裁判所への加盟(インドネシアは署名国)と国内施行に関する国際議員連盟PGA主催の円卓会議が開かれる。同国政府代表、国会議員、現地PGA支部代表、国際PGA代表、各NGO、学会代表、同国メディアなど、イスラムの休日の金曜にも関わらず多種多様な参加者を得て熱い議論が交わされた。また同日、一般法廷で軍人を裁く軍事犯罪法改正法を同国国防省が承認。国内司法の国際基準への適応について躍進が見られた(後日の報道 )。 ※出張報告前編 中編 後編

・24日: 東京の国連大学で外務省主催のシンポジウム自由と繁栄の弧をめざして―日本の人権・民主主義外交の新たな展開―』(詳細が開かれる。日本の人権外交の前面に立つ各界の専門家を招いて公開討論が行われた。国際刑事裁判所加盟(ICC)を控え、外務省側の出席者は度々ICCについて言及。政府がICCを日本の人権外交の柱の1つとして捉えていることが改めて明らかにされた。(※参加報告を掲載予定)

・27日: ①日本弁護士連合会(日弁連により、東京で国際刑事法プレシンポジウム国際刑事裁判所規程への加入が日本の刑事司法を変える!?』が開催される。ICCへの加入が日本の司法にもたらす変化・変革について日弁連ICB(国際刑事弁護士会)ほか各界の専門家が集い議論した。 (詳細) ※所感
・27日: ②日本政府がローマ規程への加入を正式に閣議決定する。これにより、同規程への批准の承認を求める批准承認法案、個別の手続き法を定める一連の法案が今国会中に衆院に提出されることが確実となった。(詳細) (閣議案件の内容(首相官邸))
・27日: ③ICCモレノオカンポ検察官が、スーダンダルフールの案件に関する証拠を予審裁判部第一法廷に提出する。ICC検察局は、スーダン政府の元内務大臣及び民兵組織の指導者の両名を、戦争犯罪及び人道に対する罪の共同正犯として起訴するに足る証拠を提出したと発表。事実であれば、元内務大臣はICCが起訴する中では最高位の元政府閣僚となる。
3月

・6日: ICCの統括部が第一審裁判部に対し、コンゴ民主共和国の案件(検察官対トマ・ルバンガ・ディーロ)を扱う第一法廷の設置を決定する。この決定に基づき、 エリザベス・オディオ=ベニト判事(コスタリカ、女性)、レネ・ブラットマン判事(ボリビア、男性、第二副所長)、エイドリアン・フルフォード判事(イギリス、男性)の3名から構成される第一審裁判部第一法廷(Trial Chamber I)が設置され、同案件が正式に付託された。

・17日: トリニダード・トバゴ選出のカール・T・ハドソン=フィリップス判事(第一審裁判部)が辞任。辞任理由は私的事由によるものとのことで、後任は現時点では不明。辞任の事実は締約国会議議長に報告されており、フィリップス判事の残りの任期を担当する後任の判事は、ローマ規程第37条〔欠員〕の規定に基づいて締約国会議によって選出されることとなった。

・23日: イエメン議会がローマ規程への加盟を承認。同規程への批准を決定した。イエメンでは憲法への抵触性が問題視されていたが、国際赤十字委員会(ICRC)の勧告を受けて議会での審議を継続し、今国会で批准承認に漕ぎ着けた模様。加盟が実現すれば、中東アラブ・イスラム諸国ではヨルダンに次いで二カ国目の締約国となる。 (詳細

・29日: 衆議院外務委員会が3月28日の時点でローマ規程への加入を承認。同規程への加入を承認するとともに関連法案を可決した。その後、29日に本会議で採決がとられ、全会一致で可決をみる。残るは参議院での採決のみとなり、早ければ4月中旬にも日本の加入が実現する運びとなった。(詳細と衆院通過を歓迎する声明
4月

・7日: イエメン議会がローマ規程に批准するための手続き法を否決し、さらにローマ規程の批准承認を撤回する。前回の承認の際に国会規則が守られなかったことを理由に80名を超える議員が再採決を求めたことがその直接の理由。これにより、イエメンが国際刑事裁判所に加盟する可能性は絶望的となった。(詳細

・26日: 参議院外交防衛委員会がローマ規程への加入を承認。さらに関連法である手続法および付帯決議についても採決をとりこれを全会一致で可決した。政府としては、明日の参議院本会議での採択を得たのち7月中にも政令発布・批准書の寄託手続きなどを行い、10月には同規程の加盟国となる意向。

・27日: ローマ規程および手続法について参議院本会議で採決がとられ、全会一致で可決された。イエメンの批准が事実上当面なくなったため、これにより日本は10月に、105カ国目の締約国として加入を果たすことになる。